はじめに
愛猫が突然「ゲッゲッ」「ズーズー」と苦しそうな咳をしている姿を見て、驚いた経験はありませんか?「毛玉を吐きたいのかな?」と思っていたら、何度も繰り返す…。実はその症状、猫の喘息(アレルギー性気管支炎)かもしれません。
猫の喘息は猫全体の約1〜5%に見られる病気で、決して珍しいものではありません。完治は難しいものの、早期発見と適切な治療・環境管理によって発作をコントロールし、普通の生活を送ることができます。
この記事では、喘息の見分け方から治療法、自宅でできる環境対策まで、飼い主さんが知っておきたい情報をわかりやすく解説します。
その咳、喘息かも?見逃しやすい猫の喘息サイン

「喘息みたいな咳」ってどんな咳?
猫は普段ほとんど咳をしない動物です。そのため、飼い主さんが猫の咳を「毛玉を吐こうとしている」「えずいている」と勘違いしてしまうケースが非常に多いのです。
猫の喘息による咳には、以下のような特徴があります。
- うつ伏せの姿勢で首を前に伸ばし、床に這いつくばるような体勢になる
- 「ゲッゲッ」「ズーズー」という人の咳とは異なる音が出る
- 咳の後に舌なめずりをしたり、口をくちゃくちゃさせる
- 発作のように1分以上続くこともある
この独特な咳は、動画で撮影しておくと動物病院での診察に非常に役立ちます。咳の様子をスマートフォンで記録しておきましょう。
こんな症状があったら要注意
咳以外にも、喘息を疑うべきサインがあります。
呼吸の異常 猫の安静時の呼吸数は1分間に20〜40回程度ですが、喘息の症状が出ると60〜80回/分と急激に増加することがあります。普段から愛猫の呼吸数を把握しておくと、異常に気づきやすくなります。
また、以下の症状が見られたら早めに動物病院を受診しましょう。
- 運動後や興奮した後に咳き込む
- 口を開けて呼吸している(猫では非常に危険なサイン)
- お腹が呼吸に合わせて大きく動いている
- 季節の変わり目や掃除の後に症状が悪化する
- 元気や食欲が落ちている
見逃しやすい初期症状 喘息の初期は、咳払いのような軽い症状がすぐに治まるため、受診が遅れがちです。しかし、初期のうちに治療を開始すると症状が落ち着きやすく、治療が遅れると回復が難しくなります。「繰り返す咳」は見逃さないようにしましょう。
猫の喘息は1ヶ月以上咳や呼吸器症状が続くことが多いのも特徴です。風邪と異なり、長期間にわたって症状が現れる場合は喘息を疑いましょう。
猫の喘息はなぜ起こる?原因を知って予防に活かす

アレルギー体質と環境の関係
猫の喘息は、人の喘息と同じようにアレルギー反応が深く関わっていると考えられています。アレルゲン(アレルギーの原因物質)を吸い込むことで気管支に炎症が起こり、気道が狭くなって咳や呼吸困難を引き起こします。
発症しやすい猫の特徴
猫の喘息は2〜3歳の若齢から発症することもあれば、4〜8歳の中齢で発症することもあります。発症の平均年齢は4〜5歳程度で、猫全体の約1〜5%に見られます。猫種ではシャム猫やシャム系の血が混じった猫に多いとされていますが、どの猫種でも発症する可能性があります。性別による発症率の差はありません。
興味深いのは、若齢で発症すると重症化しやすく、中齢以降で発症すると比較的軽度〜中等度の症状になりやすいという点です。
主なアレルゲン
室内で暮らす猫が接触しやすいアレルゲンには、以下のようなものがあります。
- ハウスダスト、ダニ、カビ
- タバコの煙
- 花粉(ブタクサ、スギなど)
- 芳香剤、消臭剤、ヘアスプレー
- 猫砂の粉塵
- 新しい家具やカーペットからの揮発性物質
発作を引き起こしやすい「きっかけ」
アレルゲンだけでなく、さまざまな環境要因が喘息発作の引き金になります。
注意すべき環境要因
- 急な温度変化(エアコンの冷風が直撃するなど)
- 室内の乾燥
- 換気不足
- ストレス(引っ越し、新しいペットの同居、来客など)
- 季節の変わり目
- 上気道感染症(猫風邪)の併発
特に見落としがちなのが、多頭飼いの環境です。同居猫のフケもアレルゲンとなることがあり、多頭飼いの猫で喘息が多いという報告もあります。
→【ストレスケア(遊び編)】
→【ストレスケア(環境編)】
→【ストレスケア(多頭飼育編)】
「そういえば…」に気づくことが大切
「最近、芳香剤を変えた」「新しい猫砂に替えた」「リフォームした」など、発作が起きたタイミングで環境の変化がなかったか振り返ってみましょう。原因のヒントが見つかるかもしれません。獣医師に相談する際も、これらの情報が診断に役立ちます。

動物病院での診断と治療|飼い主が知っておきたいこと

病院に行く前に準備しておくと良いこと
猫の喘息は診察中に症状が出ないことが多く、飼い主さんからの情報がとても重要になります。受診前に以下の準備をしておくと、スムーズに診断が進みます。
準備しておきたいこと
- 咳の様子を動画で撮影しておく
- 症状が出る頻度(1日何回、週に何回など)をメモ
- 症状が出るタイミング(掃除後、季節、時間帯など)を記録
- 最近の環境変化(新しい猫砂、芳香剤、引っ越しなど)
検査で何を見ているのか
動物病院では、複数の検査を組み合わせて総合的に診断します。
- レントゲン検査:気管支の炎症や肺の状態を確認。喘息では通常見えにくい気管支が白く映ることがあります
- 血液検査:アレルギー反応があると好酸球という白血球の一種が増加します
- 糞便検査:咳の原因となる寄生虫(肺吸虫やフィラリアなど)を除外します
猫の喘息には明確な診断基準がないため、他の病気(心臓病、肺炎など)を除外しながら、症状や検査結果、治療への反応を総合して診断されます。
治療法の選択肢と費用の目安
主な治療法
猫の喘息治療は、炎症を抑えるステロイドと気管支を広げる気管支拡張剤が中心です。投与方法には内服薬、注射、吸入療法があり、猫の性格や症状の重さに応じて選択されます。
- 内服薬:最も一般的。症状に合わせて量を調整しながら長期管理
- 注射(デポメドロールなど):即効性があり、内服が難しい猫に有効。ただし全身への副作用リスクがある
- 吸入療法:副作用が少なく長期管理に最適。猫用スペーサー(エアロキャット)を使用
吸入療法という選択肢
吸入療法は、薬を直接気管支に届けるため全身への副作用が少なく、長期治療に適しています。人の喘息治療でおなじみの「フルタイド」などの吸入ステロイドを、猫用スペーサーを使って投与します。
エアロキャット(AeroKat):Trudel Medical社の猫用吸入スペーサー。マスクを猫の口元にあて、7〜10回呼吸させることで薬剤を吸入させます。動物病院で購入でき、吸入薬と合わせて処方されます。
「完治」より「コントロール」という考え方
猫の喘息は完治が難しく、症状をコントロールしながら長く付き合っていく病気です。症状が落ち着いても自己判断で投薬を中止せず、獣医師の指示に従って治療を継続しましょう。適切な治療と環境管理で、発作を最小限に抑えながら普通の生活を送ることができます。
喘息の猫と快適に暮らすための日常管理

今日からできる環境改善
喘息の治療は薬だけでなく、アレルゲンを減らす環境づくりが欠かせません。以下のポイントを意識して、愛猫に優しい室内環境を整えましょう。
掃除のコツ
- こまめに掃除機をかける(猫がいない部屋で行うか、猫を別室に移動させてから)
- エアコンのフィルターを定期的に清掃する
- カーペットやラグは埃が溜まりやすいため、可能なら撤去または頻繁に洗濯
- 布製品(カーテン、クッション、ブランケット)も定期的に洗濯
見直したいアイテム
- 猫砂:粉塵の少ないタイプに変更を検討
- 消臭剤・芳香剤:香りの強いものは控える
- ヘアスプレー・制汗剤:猫のいない場所で使用する
- タバコ:猫がいる空間では絶対に禁煙
空気清浄機の活用
シャープ 加湿空気清浄機(プラズマクラスター搭載):
プラズマクラスターイオンで浮遊アレルゲンを抑制。ペット対応モード搭載機種もあり、動物病院でも使用されています。ダイキン 加湿ストリーマ空気清浄機:
独自のストリーマ技術でアレルゲンを分解。加湿機能付きで冬場の乾燥対策にも最適です。発作時の対応と日頃の健康管理
発作が起きたときの対応
軽い咳であれば落ち着いて様子を見ますが、以下の症状が見られたらすぐに動物病院を受診してください。
- 口を開けて呼吸している
- 舌や歯茎が青白い・紫色(チアノーゼ)
- ぐったりして動かない
- 咳が止まらず苦しそう
発作を繰り返す猫の場合、自宅用に酸素室をレンタルする方法もあります。緊急時の対応について、かかりつけの獣医師と事前に相談しておくと安心です。
日頃の健康管理のポイント
喘息の猫は、全身の健康状態を良好に保つことで発作のリスクを軽減できます。
- 体重管理:肥満は呼吸器疾患を悪化させます。適正体重を維持しましょう
- ストレス軽減:急な環境変化を避け、穏やかな生活リズムを保つ
- 定期的な健康診断:症状が安定していても定期的に獣医師のチェックを受ける
サプリメントでの健康サポート
日々の健康維持には、サプリメントの活用もおすすめです。
フェリスケア:
猫用プラセンタサプリメント。肝臓・腎臓の機能をサポートし、免疫力の維持に役立ちます。喘息で長期的に薬を服用する猫の体調管理にも適しており、毛艶の改善や元気の維持が期待できます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 猫の喘息は完治しますか?寿命に影響はありますか?
A. 猫の喘息は完治が難しく、長期的に付き合っていく病気です。ただし、適切な治療と環境管理を続けることで発作をコントロールし、通常の寿命を全うする猫も多くいます。一方で、治療が遅れたり適切な管理が行われないと、気管支の変化が元に戻らなくなったり、肺気腫などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。早期発見・早期治療が何より大切です。
Q2. 市販の咳止め薬を飲ませても大丈夫ですか?
A. 人用の市販薬を猫に与えることは絶対に避けてください。猫は人とは代謝が異なり、人用の薬が中毒を起こすことがあります。また、咳止めで症状を抑えても根本的な炎症は治まらず、かえって悪化する可能性があります。必ず動物病院を受診し、獣医師が処方した薬を使用してください。
Q3. 発作を予防する方法はありますか?
A. 完全に発作を防ぐことは難しいですが、以下の対策でリスクを減らせます。
- アレルゲンの除去(こまめな掃除、禁煙、芳香剤の使用を控える)
- 粉塵の少ない猫砂への変更
- 空気清浄機の使用
- 適正体重の維持
- ストレスの少ない穏やかな環境づくり
- 獣医師の指示に従った継続的な投薬
症状が安定していても自己判断で薬をやめないことが重要です。
Q4. 多頭飼いの場合、他の猫にうつりますか?
A. 猫の喘息は感染症ではないため、他の猫にうつることはありません。アレルギー体質によって発症する病気です。ただし、同居猫のフケがアレルゲンとなって喘息を悪化させる可能性はあります。多頭飼いの環境では、より念入りな掃除と空気清浄が推奨されます。
Q5. 喘息の猫にまたたびを与えても大丈夫ですか?
A. またたびの粉末を吸い込むことで気道を刺激し、発作を誘発する可能性があります。喘息の猫には与えないか、粉末タイプは避けて枝タイプなど粉塵が出にくいものを選び、様子を見ながら少量から試すことをおすすめします。心配な場合は獣医師に相談してください。
まとめ

猫の喘息は完治が難しい病気ですが、決して怖い病気ではありません。早期発見・適切な治療・環境管理の3本柱で、発作をコントロールしながら愛猫と穏やかな毎日を過ごすことができます。
この記事のポイント
- 猫の咳は「ゲッゲッ」「ズーズー」という独特の音。毛玉と間違いやすいので動画で記録を
- 若齢〜中齢で発症しやすく、シャム系に多いとされるがどの猫種でも起こりうる
- 治療はステロイドと気管支拡張剤が中心。吸入療法は副作用が少なく長期管理に適している
- アレルゲン除去(こまめな掃除、禁煙、芳香剤の見直しなど)が発作予防のカギ
- 口を開けて呼吸している場合は緊急事態。すぐに動物病院へ
愛猫の「いつもと違う呼吸」に気づける飼い主でいることが、早期発見への第一歩です。気になる症状があれば、迷わず獣医師に相談しましょう。
参考文献・参照記事
- 次郎丸動物病院「猫の喘息の症状と原因、治療について|獣医師が解説」 https://jiroumaru-ah.com/case/case-cardiovascular/entry-87.html
- にゃんペディア「猫が喘息になったらどうする?症状、治療法などを解説【獣医師が解説】」 https://nyanpedia.com/nekonozensoku-2/
- 乙訓どうぶつ病院「猫喘息」 https://www.otokuni-ah.jp/case/5763/
- PS保険「猫の喘息の症状と原因、治療法について」 https://pshoken.co.jp/note_cat/disease_cat/case029.html
- アニコム損保「猫も「喘息」になる?どんな症状?治療法は?」 https://www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/5695.html
- かすみペットクリニック「猫の咳や呼吸の異常は要注意!|感染性気管支炎と猫喘息(慢性気管支炎)の早期発見と対処法」 https://kasumi-petclinic.com/column/3443/
- リアンアニマルクリニック「猫が苦しそうに咳をする理由は喘息?|見逃しやすい症状と対策」 https://www.lien-ac.com/909
- 亀山動物病院「猫の喘息(慢性気管支炎、アレルギー性気管支炎)」 https://www.kameyama-ah.com/2021/07/12/2421/
- HALU代官山動物病院「治らない猫の咳は喘息かも?|慢性化する危険な咳を改善させる治療を詳しく解説」 https://www.halu.vet/1845-2/
- 日本動物医療センター「猫の咳と喘息用吸入器(AEROKAT®)の使い方」 https://jamc.co.jp/cat_colum/猫の咳と喘息用吸入器aerokatの使い方/
- あつき動物病院「犬猫用吸入療法スペーサー」 https://atsuki-ac.com/aerocat/
- VetsEye「エアロキャット・エアロドッグ – 患部に直接薬剤を届け、安全な疾患管理を」 https://vetseye.info/aerokat/
- 猫専門病院 nekopedia「喘息猫用スペーサー(吸入器)エアロカットの使い方」 https://nekopedia.jp/feline-aerosol-chamber/
- FPC「猫喘息」 https://www.fpc-pet.co.jp/cat/disease/272
- 博多犬猫医療センター「猫の呼吸器病(猫喘息)」 https://www.hakata-dcm.jp/news/猫の呼吸器病(猫喘息)/
- withpety「愛猫の呼吸が苦しそう・・・猫喘息について知りましょう」 https://withpety.com/withpetyclub/detail.php?kid=2251
- ふぁみまる「猫も喘息になる!猫喘息の症状を徹底解説!」 https://pet-tabi.jp/weblog/neko-zensoku/
- 横浜弘明寺呼吸器内科クリニック「喘息に空気清浄機は効果があるのか?」 https://www.kamimutsukawa.com/blog2/kokyuuki/5298/
- Roots動物病院「猫の喘息について|猫が咳をしていたら人と同じ喘息?」 https://www.roots-ah.com/news/1285


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