はじめに
冬は持病を持つ猫にとって、最も注意が必要な季節です。気温の低下や空気の乾燥により、慢性腎臓病、心臓病、呼吸器疾患などの持病が悪化しやすくなります。特に高齢猫は体温調節機能が低下しているため、寒さへの適応が難しくなっています。
実際に、冬場の泌尿器疾患は他の季節と比べて2倍以上発生するというデータもあります。また、寒さによる血管収縮は心臓や腎臓に大きな負担をかけ、持病の急激な悪化を招くことがあります。
「いつもより元気がない」「水を飲む量が減った」「咳が増えた」など、冬場の小さな変化を見逃さないことが愛猫の命を守る鍵となります。この記事では、持病を持つ猫の冬の体調管理について、疾患別のモニタリングポイントと具体的な対策を詳しく解説します。愛猫の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。
持病が冬に悪化しやすい理由と基本の環境管理

冬に持病が悪化しやすい理由
猫の持病が冬に悪化しやすい背景には、寒冷環境特有の生理的変化があります。気温が下がると猫の体内では血管が収縮し、血圧が上昇しやすくなります。また、寒さを感じると活動量が低下し、水を飲む回数も減少します。
冬場に持病が悪化しやすい主な要因は以下のとおりです。
- 飲水量の減少:冷たい水を嫌がり、脱水状態になりやすい
- 血管の収縮:寒さによる末梢血管の収縮で血圧が上昇
- 活動量の低下:運動不足により血行不良や筋力低下を招く
- 乾燥した空気:暖房使用で湿度が下がり、呼吸器への負担が増加
特に15歳以上の高齢猫では約81%が何らかの腎機能低下を抱えているとされ、冬場の脱水が症状悪化の引き金になることが少なくありません。
基本的な環境管理のポイント
持病を持つ猫のために、冬場は室内環境を適切に整えることが重要です。室温は20〜25℃を目安に維持し、特に明け方の急激な冷え込みに注意が必要です。暖かい場所と涼しい場所を用意して、猫が自分で快適な場所を選べるようにしましょう。
環境管理の基本項目をまとめると以下のようになります。
- 室温管理:20〜25℃を維持し、温度差を最小限に抑える
- 水飲み場の工夫:暖かい部屋に水を置き、ぬるま湯を用意する
- トイレの配置:寒い場所を避け、猫が行きやすい場所に設置
- 寝床の保温:ペット用ヒーターやブランケットで暖かさを確保
日頃から愛猫の状態を観察し、食欲、飲水量、排泄の回数や量、活動量などを把握しておくことが大切です。「いつもと何か違う」と感じたときには、その変化をメモしておき、獣医師に伝えられるようにしておきましょう。
また、暖房器具の使い方にも注意が必要です。こたつやホットカーペットは猫が好みますが、長時間使用すると低温やけどや脱水の原因になることがあります。必ず逃げ場を確保し、定期的に水分補給を促すようにしてください。
腎臓病の猫|冬の注意サインと水分補給の工夫

腎臓病が冬に悪化しやすい理由
慢性腎臓病を持つ猫にとって、冬は最も警戒が必要な季節です。寒さで水を飲む量が減ると脱水状態になりやすく、腎臓への負担が急激に増加します。腎臓は体内の老廃物を尿として排出する臓器ですが、水分が不足すると濾過機能が低下し、血液中の毒素が蓄積してしまいます。
冬場の泌尿器疾患は他の季節と比べて2倍以上発生するというデータもあり、腎臓病の猫は特に注意が必要です。飲水量の低下、食欲不振、嘔吐の増加、被毛の艶の悪化などが見られたら、早めに獣医師に相談しましょう。
水分摂取を増やすための工夫
腎臓病の猫には、冬場でも十分な水分を摂取させることが重要です。冷たい水は飲みにくいため、ぬるま湯(人肌程度)を用意したり、ウェットフードの比率を増やしたりする工夫が効果的です。
水分摂取を増やすための具体的な方法は以下のとおりです。
- ぬるま湯の提供:冷たい水より飲みやすく、飲水量アップに効果的
- ウェットフードの活用:ドライフードより水分含有量が多い
- 水飲み場を複数設置:暖かい部屋の数か所に置くと飲む機会が増える
- 自動給水器の導入:流れる水に興味を持ち、飲水量が増える猫も多い
<おすすめの自動給水器>
- ジェックス ピュアクリスタル グラッシーR 猫用:コードレスポンプ搭載で手入れがしやすく、軟水化フィルターで尿路の健康維持にも配慮。獣医師も推奨する循環式給水器で、飲水量が約30%アップするとの実績があります。
<おすすめの腎臓病用療法食>
腎臓病の食事管理には、リンやナトリウムを制限した療法食が推奨されます。獣医師と相談の上、愛猫に合った療法食を選びましょう。
- ロイヤルカナン 腎臓サポート:リンの含有量を制限し、高消化性のタンパク質を使用。食欲が落ちやすい腎臓病の猫に配慮した香りで食いつきも良好です。療法食は必ず獣医師に相談をしてください。
- ヒルズ k/d ケイディー:独自のアクティブバイオーム+キドニーディフェンス技術で腸内環境と腎臓の健康をサポート。チキン味・ツナ味など複数のフレーバーがあります。
<おすすめのサプリメント>
- フェリスケア(猫用プラセンタサプリメント):肝臓・腎臓の機能をサポートし、被毛の艶や活力の改善にも期待できます。冬場の体力維持におすすめです。
冬場の腎臓病管理では、尿の量や色のチェックも重要です。尿量が減った、色が濃くなった、排尿時に痛そうにしているなどの変化があれば、すぐに獣医師に相談しましょう。
心臓病の猫|冬の急変リスクと生活管理

心臓病が冬に悪化しやすい理由
心臓病を持つ猫は、冬場の寒さによる急激な血圧上昇に特に注意が必要です。猫の心臓病で最も多いのは肥大型心筋症で、心臓の筋肉が異常に厚くなることで血液を送り出す機能が低下します。冬場は血管が収縮しやすく、心臓への負担が増大するため、突然の悪化や血栓塞栓症のリスクが高まります。
心臓病の猫が冬に悪化する主な要因は以下のとおりです。
- 急激な温度変化:暖かい部屋から寒い廊下への移動で血圧が急上昇
- 血管の収縮:寒さで末梢血管が収縮し、心臓の負担が増加
- 血栓のリスク上昇:血流が悪くなると血栓ができやすくなる
特に注意すべき症状は、呼吸が速くなる、口を開けて呼吸する、後ろ足を引きずる、足先が冷たくなるなどです。これらの症状が見られたら、血栓塞栓症の可能性があるため、すぐに動物病院を受診してください。
冬場の生活管理と注意点
心臓病の猫にとって、温度変化を最小限に抑えた生活環境を整えることが重要です。部屋間の温度差をなくし、急激な寒暖差を避けるようにしましょう。また、興奮やストレスは心臓に大きな負担をかけるため、穏やかな生活リズムを心がけてください。
心臓病の猫の冬の管理ポイントをまとめると以下のようになります。
- 温度差の回避:部屋間の温度差を5℃以内に抑える
- 過度な運動を避ける:激しい遊びや興奮を控え、穏やかに過ごす
- 塩分制限:ナトリウムを制限した療法食で心臓への負担を軽減
- 定期的な通院:症状の変化がなくても、月1回程度の検診が推奨される
心臓病の猫には、タウリンが十分に含まれた食事が重要です。タウリンは心筋の収縮力維持に欠かせないアミノ酸で、不足すると拡張型心筋症の原因にもなります。
<おすすめの心臓病用療法食>
- ロイヤルカナン 心臓サポート:ナトリウム含有量を調整し、タウリン・L-カルニチンを強化配合。心臓への負担軽減に配慮した設計です。
肥大型心筋症の猫は無症状のまま進行することも多く、定期的な心臓超音波検査が早期発見に役立ちます。特にメインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘアなどは遺伝的に発症しやすい傾向があるため、若いうちから健康診断を受けることをおすすめします。

呼吸器疾患の猫|冬の悪化防止と環境対策

呼吸器疾患が冬に悪化しやすい理由
猫喘息や気管支炎などの呼吸器疾患を持つ猫は、冬の乾燥した空気と暖房の影響で症状が悪化しやすくなります。気道の粘膜は適度な湿度がないと刺激に敏感になり、咳や呼吸困難を引き起こしやすくなります。また、閉め切った室内ではハウスダストやダニが増えやすく、アレルゲンとなって症状を誘発することがあります。
呼吸器疾患が冬に悪化する主な要因は以下のとおりです。
- 乾燥した空気:暖房使用で湿度が低下し、気道粘膜が刺激を受けやすくなる
- ハウスダストの増加:換気が減り、室内のアレルゲンが蓄積
- 急激な温度変化:冷たい空気を吸い込むと気道が収縮しやすい
猫喘息の典型的な症状として、「ゲッゲッ」「ズーズー」といった独特の咳、呼吸が速くなる、口を開けて呼吸するなどが挙げられます。これらの症状が頻繁に見られる場合は、早めに獣医師の診察を受けてください。
呼吸器に優しい環境づくり
呼吸器疾患を持つ猫のためには、室内の空気環境を整えることが最も重要です。適切な湿度管理とアレルゲンの除去が、症状の悪化防止につながります。
冬場の環境管理のポイントは以下のとおりです。
- 湿度管理:40〜60%を維持し、加湿器を活用する
- 空気清浄機の設置:ホコリや花粉、ハウスダストを除去
- 換気の実施:1日数回、短時間でも空気を入れ替える
- 刺激物の排除:タバコの煙、香水、芳香剤、消臭スプレーを避ける
<おすすめの空気清浄機>
呼吸器疾患を持つ猫には、HEPAフィルター搭載の空気清浄機がおすすめです。ペットのフケや毛、ハウスダストを効果的に除去できます。
- シャープ 加湿空気清浄機(プラズマクラスター搭載):プラズマクラスターイオンで浮遊アレルゲンを抑制。ペット対応モード搭載機種もあり、動物病院でも使用されています。
- ダイキン 加湿ストリーマ空気清浄機:独自のストリーマ技術でアレルゲンを分解。加湿機能付きで冬場の乾燥対策にも最適です。
猫喘息は完治することが難しく、発作を起こさないようコントロールしていく病気です。症状が軽い場合はステロイド薬の吸入療法が主な治療となりますが、冬場は発作が起きやすいため、処方された薬は切らさないようにしましょう。また、猫砂から出るホコリも呼吸器への刺激となるため、粉塵の少ないタイプへの変更も検討してみてください。
Q&A:持病のある猫の冬の健康管理でよくある質問
Q1. 持病のある猫の冬の適温は何度ですか?
A. 室温20〜25℃が目安です。特に心臓病の猫は急激な温度変化が危険なため、部屋間の温度差を5℃以内に抑えることが重要です。寒い廊下やトイレへの移動時に温度差で体に負担がかかるため、猫の行動範囲全体を暖かく保つよう工夫しましょう。
Q2. 腎臓病の猫が冬に水を飲まなくなりました。どうすればいいですか?
A. 冷たい水は飲みにくいため、人肌程度のぬるま湯を用意してみてください。また、ウェットフードの比率を増やす、循環式給水器を導入する、水飲み場を暖かい部屋に複数設置するなどの工夫も効果的です。それでも飲水量が改善しない場合は、獣医師に相談して皮下点滴などの対応を検討しましょう。
Q3. 心臓病の猫が冬に注意すべき緊急症状は何ですか?
A. 最も注意すべきは血栓塞栓症の症状です。後ろ足を引きずる、足先が冷たくなる、突然激しく痛がって鳴く、口を開けて荒い呼吸をするなどの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。血栓塞栓症は数時間以内の処置が必要な緊急事態です。
Q4. 猫喘息は冬に悪化しやすいですか?
A. はい、冬は悪化しやすい季節です。暖房による乾燥、換気不足によるハウスダストの蓄積、冷たい空気による気道刺激などが原因です。室内の湿度を40〜60%に保ち、空気清浄機を設置し、定期的に換気することで悪化を防げます。処方された吸入薬やステロイド薬は切らさないよう注意してください。
Q5. 持病のある猫は冬に何回くらい通院すべきですか?
A. 一般的に月1回程度の定期検診が推奨されます。冬は体調を崩しやすい季節のため、症状の変化がなくても定期的に血液検査や心臓超音波検査を受けることで、悪化の兆候を早期に発見できます。かかりつけの獣医師と相談して、愛猫の状態に合った通院頻度を決めましょう。
まとめセクション

まとめ:早期発見と定期検診が愛猫の命を守る
持病を持つ猫の冬の体調管理では、「いつもと違う」小さな変化を見逃さないことが最も重要です。飲水量の変化、呼吸の様子、活動量の低下、食欲の変化など、日頃から愛猫の状態を観察する習慣をつけましょう。
疾患ごとに特に注意すべきポイントをまとめると以下のようになります。
- 腎臓病:飲水量と尿量の変化、脱水の兆候に注意
- 心臓病:呼吸の異常、後ろ足の麻痺など血栓症状に注意
- 呼吸器疾患:咳の頻度、呼吸困難の有無に注意
特に注意したいのは、急な症状悪化のサインです。呼吸が荒い、ぐったりしている、食欲が急に落ちたなどの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。持病を持つ猫は、症状が出てからでは手遅れになることもあります。
飼い主さんの日々の観察と獣医師による定期的なチェックで、愛猫の健康を守っていきましょう。適切な環境管理と早期対応で、寒い冬も愛猫と一緒に乗り越えていきましょう。
参考文献・参照記事リスト
獣医学・医療情報
- アニコム損害保険株式会社「冬場に多い猫の病気」 https://www.anicom-sompo.co.jp/
- 日本獣医師会「小動物の疾患情報」 https://nichiju.lin.gr.jp/
- アイリスペットどっとコム「猫の慢性腎臓病の管理」 https://www.iris-pet.com/
- ペット保険のPS保険「猫の心臓病について」 https://pshoken.co.jp/
製品情報
- ジェックス株式会社「ピュアクリスタル 製品情報」 https://www.gex-fp.co.jp/
- ロイヤルカナン ジャポン「療法食製品情報」 https://www.royalcanin.com/jp
- 日本ヒルズ・コルゲート株式会社「プリスクリプション・ダイエット」 https://www.hills.co.jp/
- シャープ株式会社「空気清浄機 製品情報」 https://jp.sharp/kuusei/
- ダイキン工業株式会社「空気清浄機 製品情報」 https://www.daikin.co.jp/air/
- パナソニック株式会社「空気清浄機 製品情報」 https://panasonic.jp/airrich/
動物病院・専門機関
- 国際猫医学会(ISFM)「猫の慢性疾患ガイドライン」 https://icatcare.org/
- コーネル大学獣医学部「猫の健康情報」 https://www.vet.cornell.edu/
※本記事は獣医師の監修を受けて作成されています。愛猫の健康状態については、必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。


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