はじめに
「猫を2匹目に迎えたいけれど、先住猫と仲良くしてくれるか心配…」そんな悩みを抱えている飼い主さんも多いのではないでしょうか。実際に多頭飼いを始めてみると、「いきなり対面させてしまった」「におい慣らしを飛ばしてしまった」など、良かれと思ってやったことが裏目に出てしまうケースが珍しくありません。
多くの飼い主さんが導入段階でつまずいており、特に「先住猫との対面方法」で失敗するケースが目立ちます。しかし、失敗してしまっても諦める必要はありません。正しい手順で再チャレンジすることで、猫同士の関係を改善できる可能性は十分にあります。
この記事では、多頭飼い導入でやりがちな8つのミスを具体的に解説し、失敗からの立て直し方法まで詳しくご紹介します。
【準備段階】多頭飼い前にやりがちな4つのミス

ミス1:先住猫の性格を軽視する
「うちの子は人懐っこいから大丈夫」と思っていても、実際は一人っ子タイプの猫だったというケースは少なくありません。来客時に隠れてしまったり、環境の変化に敏感な猫の場合、多頭飼いは大きなストレスとなります。特に10歳以上のシニア猫は、環境変化への適応力が低下しているため、慎重な判断が必要です。
先住猫の性格を見極めるポイントとして、普段の行動パターンを観察しましょう。飼い主以外の人に対して警戒心が強い、新しいおもちゃや家具に慣れるまで時間がかかる、音に敏感で隠れがちといった特徴がある猫は、多頭飼いに向かない可能性があります。
ミス2:住環境の準備不足(部屋数・逃げ場所)
猫のソーシャルディスタンスは約2メートルと言われており、お互いが適度な距離を保てる環境が必要です。猫が快適に過ごすためには「自由に出入りできる部屋数から1を引いた数」が飼育可能な上限の目安となります。つまり3部屋あれば2匹まで、2部屋なら1匹が理想的です。6畳一間で2匹飼いは現実的に厳しく、それぞれの逃げ場所を確保できる広さが不可欠です。
理想的な環境として、1LDK以上の間取りで、リビングに1匹、寝室に1匹といった具合に分けられることが望ましいです。また、高さのあるキャットタワーや隠れ家になるキャットハウスを複数設置し、垂直方向の居住空間も確保することで、限られたスペースでも快適な環境を作ることができます。
ミス3:トイレ環境の計算ミス
「猫の頭数+1個」がトイレの理想数ですが、単純に個数を増やすだけでは不十分です。猫同士が待ち伏せできない動線設計や、それぞれがアクセスしやすい配置が重要になります。また、猫は他の猫の匂いがするトイレを嫌う傾向があるため、十分な距離を離して設置する必要があります。
トイレの配置では、各トイレが異なる通路からアクセスできるように工夫することが大切です。一直線上に並べるのではなく、部屋の角や廊下の両端など、猫同士が鉢合わせしにくい場所を選びましょう。また、トイレの種類(オープン型とドーム型)を使い分けることで、猫の好みに対応できます。
ミス4:健康チェックの怠り
新入り猫の健康状態確認を怠ると、先住猫に感染症をうつしてしまう危険があります。特に保護猫の場合は、猫エイズ・猫白血病・猫風邪などの検査が必須です。また、先住猫も多頭飼い開始前に健康診断を受け、ワクチン接種を最新の状態にしておくことで、双方の健康を守ることができます。
→【猫エイズ(FIV)についてはこちら】
健康チェックでは、血液検査による感染症の確認、便検査による寄生虫の有無、外部寄生虫(ノミ・ダニ)の確認が必要です。新入り猫に症状が見られなくても、潜伏期間中の可能性があるため、最低2週間の隔離期間を設けることをお勧めします。この期間を利用して、双方の猫の様子を観察することも重要な準備の一つです。
→【ノミ・ダニについてはこちら】
【対面導入期】初対面でやりがちな4つのミス

ミス5:いきなり対面させてしまう
新入り猫を迎えたその日に「早く仲良くなってほしい」と思い、すぐに対面させてしまうのは最も多い失敗です。猫は縄張り意識が強く、突然現れた侵入者を脅威として認識します。先住猫が威嚇やマーキングを始めてしまうと、その後の関係構築が格段に困難になります。最低でも3〜4日間は完全に隔離し、お互いの存在を匂いと音だけで認識させる期間が必要です。
この段階では、新入り猫を別室で完全に隔離し、先住猫には新入り猫の存在を気配と匂いでのみ感じさせます。扉越しに相手の存在を認識させることで、「侵入者」ではなく「同居者」として受け入れる準備を整えることができます。焦りは禁物で、両方の猫がリラックスしている状態を維持することが最優先です。
ミス6:におい慣らしを飛ばす・短縮する
「隔離期間が長すぎるのでは」と心配になり、におい慣らしの段階を急いでしまうケースも失敗の原因です。使用済みの毛布やタオルを交換し合う作業は、猫同士の情報交換において重要なステップです。この段階で先住猫がリラックスして新入り猫の匂いを受け入れるまで、少なくとも1週間程度は必要と考えましょう。焦らずじっくりと進めることが成功の鍵となります。
匂い慣らしの具体的な方法として、新入り猫が使用したタオルを先住猫の食事場所の近くに置いたり、お気に入りの場所に設置したりします。最初は距離を置いて様子を見て、先住猫が匂いに慣れてきたら徐々に近づけていきます。この過程で先住猫がストレスサインを見せたら、すぐに前の段階に戻ることが重要です。
ミス7:先住猫のペースを無視して進める
新入り猫の様子ばかりに気を取られ、先住猫のストレスサインを見逃してしまうことがあります。食欲不振、隠れて出てこない、過度なグルーミング、トイレ以外での排泄などの症状が見られたら、一度プロセスを止めて先住猫を優先すべきです。先住猫の生活ペースを可能な限り維持し、十分に愛情を注ぐことで、新入り猫への敵対心を和らげることができます。
先住猫への配慮として、普段の食事時間や遊びの時間を変更せず、新入り猫の世話で忙しくても先住猫との時間を確保することが大切です。また、先住猫のお気に入りの場所や物を新入り猫に譲ることなく、今まで通りの特権を維持させることで、「地位を脅かされている」という不安を和らげることができます。
ミス8:ケンカを見つけたら即諦める
初回の対面でシャーっと威嚇したり、軽いケンカをしたりすると「相性が悪い」と判断してしまいがちです。しかし、これは猫同士の正常なコミュニケーションプロセスの一部です。お互いに優劣関係を確認している段階であり、時間をかけて見守ることが大切です。ただし、激しい攻撃や一方的な追い回しが続く場合は、専門家への相談を検討しましょう。
猫同士の初期の争いでは、威嚇の強さや頻度、攻撃の激しさを慎重に観察することが重要です。毛を逆立てての威嚇や軽い猫パンチ程度なら正常範囲内ですが、噛み付いて離さない、一方的に追い回すといった行動が見られる場合は、一度隔離して専門家に相談することをお勧めします。時間をかけて関係改善を図ることで、多くの場合は共存が可能になります。

失敗からの再チャレンジ!正しい多頭飼い導入手順

におい慣らしの具体的な方法
まず完全隔離から始めましょう。新入り猫を先住猫とは別の部屋に1週間程度隔離し、使用済みの毛布やタオルを毎日交換します。先住猫が新入り猫の匂いのついたタオルを嗅いで、リラックスした状態を保てるようになるまで焦らず待つことが重要です。この段階で先住猫が過度にストレスを感じている場合は、期間を延長する必要があります。
匂い慣らしの進行目安として、先住猫が新入り猫の匂いのついたタオルに対して無関心になったり、匂いを嗅いでもリラックスしている状態になれば成功です。逆に、威嚇したり逃げ回ったりする場合は、まだ時期尚早のサインです。この段階を急ぐことなく、じっくりと時間をかけることが後の成功につながります。
段階的対面の進め方(期間の目安付き)
1週間の隔離期間後、ケージ越しの対面を開始します。
アイリスオーヤマ プラスチック製キャットケージ 3段:
多頭飼いに適した広々とした3段構造で、新入り猫が安心して過ごせるスペースを提供できます。まずは1日15分程度から始め、お互いが落ち着いている様子なら徐々に時間を延長します。2〜3週間かけてケージ越しの共存に慣れてもらいましょう。対面スケジュールの例として、1週目は1日15分、2週目は30分、3週目は1時間といった具合に段階的に延ばしていきます。この間、食事やおやつの時間を対面タイムに設定することで、相手の存在を「良いこと」と関連付けることができます。また、ケージの位置も最初は3メートル程度離し、慣れてきたら徐々に近づけていくことが効果的です。
ストレス軽減のためのフェロモン製品活用
多頭飼い導入時には、フェロモン製品の活用が効果的です。
フェリウェイスプレー(セバ・ジャパン):
フェリウェイの使用方法として、対面を開始する1週間前から使用を開始し、対面場所やケージ、先住猫のお気に入りの場所に定期的にスプレーします。効果が現れるまでに数日から数週間かかることがあるため、継続的な使用が重要です。ただし、個体差があるため、効果を感じられない場合でも他の対策と組み合わせることで改善の可能性があります。
→【ストレスケア(遊び編)】
→【ストレスケア(環境編)】
上手くいかない時の見直しポイント
対面開始から1ヶ月経っても改善が見られない場合は、一度振り出しに戻ることも必要です。先住猫の年齢や性格によっては、完全な仲良しにならなくても「同じ空間にいることを許容する」レベルで十分成功と言えます。重要なのは、どちらの猫もストレスなく生活できる環境を整えることです。
見直しの具体的なポイントとして、隔離期間が十分だったか、におい慣らしを急ぎすぎていないか、先住猫への配慮が不足していないかを再確認しましょう。また、対面の時間帯や場所を変更することで改善する場合もあります。朝の落ち着いた時間帯や、お互いの猫がリラックスしやすい環境での対面を試してみることをお勧めします。
多頭飼いが向かない猫・諦めるべき状況の見極め

一人っ子タイプの猫の特徴
すべての猫が多頭飼いに向いているわけではありません。他の猫がいると隠れて出てこなくなる、極度に神経質になる、トイレを我慢してしまうような猫は、生涯一人っ子として過ごす方が幸せな場合があります。こうした「一人っ子タイプ」の猫の特徴を理解し、無理に多頭飼いを強行するのではなく、その子らしい生活を尊重することが大切です。
一人っ子タイプの猫を見極めるサインとして、普段から飼い主以外の人に強い警戒心を示す、環境の変化に対して長期間適応できない、ストレスで体調を崩しやすいといった特徴があります。また、子猫の頃から単独で過ごしてきた猫や、野良猫として成長した後に保護された猫は、社会化期を逃しているため多頭飼いが困難な場合が多いです。
先住猫の年齢による判断基準
10歳以上のシニア猫は、環境変化によるストレスが健康に深刻な影響を与える可能性があります。膀胱炎、食欲不振、免疫力低下などの症状が現れやすく、場合によっては命に関わることもあります。高齢猫の場合は、新入り猫の導入よりも現在の生活の質を維持することを最優先に考えましょう。既に安定した生活を送っているシニア猫には、変化よりも安心できる環境の継続が何より重要です。
シニア猫への配慮として、慢性疾患の有無、現在の活動レベル、ストレス耐性などを総合的に判断する必要があります。特に腎臓病や心疾患を患っている猫は、ストレスが病状を悪化させる可能性が高いため、多頭飼いは避けるべきです。かかりつけの獣医師と相談の上、慎重に判断することをお勧めします。
完全に諦めるべき状況
3ヶ月以上適切な手順で導入を試みても、激しい攻撃や一方的な追い回しが続く場合は、同居を諦める判断も必要です。また、どちらか一方が体調を崩し続ける、極度にストレスを感じている様子が見られる場合も、猫の福祉を最優先に考えて決断すべきです。この場合、新しい里親さんを探すことも愛情ある選択の一つとなります。
諦めるべき状況の具体例として、噛み付いて怪我をさせる、執拗に追い回して相手が食事やトイレに行けない、ストレスで継続的に嘔吐や下痢を起こすといった深刻な症状が挙げられます。これらの状況が改善されない場合は、猫の健康と安全を守るために、冷静な判断が必要です。専門家の意見も参考にしながら、最善の選択を行いましょう。
部屋を分けての共存という選択肢
完全な仲良しにはなれなくても、「部屋を分けた共存」という方法があります。住環境に余裕がある場合は、それぞれの猫に専用スペースを確保し、顔を合わせる頻度を最小限に抑えながら同じ家で暮らすことも可能です。重要なのは、どちらの猫もストレスなく過ごせることであり、必ずしも密接な関係を築く必要はないのです。この選択肢も、立派な多頭飼いの成功例と言えるでしょう。
部屋を分ける際の工夫として、それぞれの猫に専用のトイレ、食事場所、休憩スペースを設け、定期的に部屋を交換することで両方の猫が家全体を楽しめるようにします。また、飼い主との時間も平等に確保し、どちらの猫も愛情を感じられる環境を維持することが重要です。完全分離でも、両方の猫が幸せに暮らせるなら十分な成功と言えます。
よくある質問(Q&A)
Q1: 多頭飼い導入にはどのくらいの期間が必要ですか?
A: 個体差はありますが、完全隔離から安定した共存まで、一般的に2〜3ヶ月程度を見込んでおきましょう。急がずじっくりと進めることが成功の鍵です。一部の猫では1年程度かかる場合もあるため、猫のペースに合わせることが重要です。
Q2: フェリウェイなどのフェロモン製品は本当に効果がありますか?
A: 研究では75〜97%の猫で改善効果が報告されていますが、個体差があります。効果が現れるまでに数週間かかることが多く、即効性は期待できません。ただし、多頭飼い導入時のストレス軽減には有効な補助手段として活用する価値があります。
Q3: 先住猫が新入り猫を威嚇し続けています。諦めるべきでしょうか?
A: 初期の威嚇は正常な反応です。3ヶ月以上適切な手順で導入を続けても激しい攻撃が続く場合は、専門家への相談を検討してください。ただし、軽い威嚇程度なら時間をかけて見守ることをお勧めします。
Q4: ケージは必ず必要ですか?どのサイズを選べば良いでしょうか?
A: 多頭飼い導入時にはケージは必須です。新入り猫が安心できる空間を提供し、段階的な対面を可能にします。3段タイプで幅80cm以上のものがおすすめで、トイレや水入れを設置しても十分な居住空間が確保できるサイズを選びましょう。
Q5: 兄弟猫なら導入は簡単ですか?
A: 兄弟猫同士でも、一度離ればなれになると初対面の猫同様の手順が必要です。特に生後8週間を過ぎてから再会する場合は、慎重な導入プロセスを踏むことをお勧めします。血縁関係があっても油断は禁物です。
Q6: 多頭飼いに失敗した場合、新入り猫はどうすれば良いですか?
A: まず、3ヶ月以上の十分な期間をかけて導入を試みることが大切です。それでも上手くいかない場合は、新しい里親さんを探すことも愛情ある選択です。保護団体や動物病院に相談し、その子により適した環境を見つけてあげましょう。
まとめ

多頭飼い導入でやりがちな8つのミスは、事前の準備不足と焦りが主な原因です。先住猫の性格を見極め、十分な住環境とトイレ環境を整えることが成功の第一歩となります。そして最も重要なのは、段階的な導入プロセスを守ることです。
におい慣らしや隔離期間を急いでしまったり、先住猫のペースを無視して進めてしまったりすると、その後の関係修復が困難になります。失敗してしまった場合でも、振り出しに戻って正しい手順で再チャレンジすることで改善の可能性は十分にあります。
ただし、すべての猫が多頭飼いに向いているわけではありません。一人っ子タイプの猫やシニア猫の場合は、無理に多頭飼いを進めるよりも、その子らしい生活を尊重することが何より大切です。猫の幸福を最優先に考え、焦らずじっくりと向き合うことが、成功への近道となるでしょう。
参考文献・参照記事
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記事作成にあたり、獣医師監修の信頼性の高い情報源を中心に参照いたしました。最新の情報については、かかりつけの獣医師にご相談ください。



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