はじめに
雨の日になると、いつもは活発だった愛猫がぐっすり眠っていたり、なんとなく元気がないように見えたりすることはありませんか?実は、この行動変化には科学的な理由があります。猫は人間以上に気圧の変化に敏感で、雨の日特有の低気圧が体調や行動に大きな影響を与えているのです。
この記事では、雨の日に見られる猫の行動変化の科学的な背景から、気圧が猫の体に与える具体的な影響、そして飼い主ができるケア方法まで詳しく解説します。愛猫の雨の日の過ごし方を理解することで、より適切なサポートができるようになるでしょう。
雨の日に見られる猫の行動変化

雨の日になると、多くの猫に特徴的な行動変化が見られます。これらの変化は偶然ではなく、猫の本能や身体的な反応に基づいた自然な現象です。
睡眠時間の大幅な増加
猫は平時でも1日12〜16時間眠りますが、雨の日はさらに睡眠時間が増加します。これは狩猟動物としての本能的な行動です。野生時代、雨の日は狩りの成果が期待できないため、猫は体力温存のために眠って過ごしていました。現代の室内飼いの猫でも、この遺伝的な記憶が残っているのです。
また、雨の日は太陽光が不足するため、メラトニンというホルモンの分泌が抑制されません。太陽光を浴びるとメラトニンの分泌が止まって活動モードに入りますが、雨の日は活動モードに切り替わらず、休養モードが続くため長時間眠り続けることになります。
活動量の著しい低下
雨の日の猫は明らかに動きが鈍くなります。いつものように走り回ったり、高い場所に飛び移ったりする行動が減少し、一つの場所でじっとしていることが多くなります。これは単なる気分の問題ではありません。
猫の被毛は水分を含みやすく乾きにくい特徴があります。雨の日の高い湿度により、毛が水分を含んで重くなり、身体が重だるく感じられるのです。さらに、砂漠出身の猫の祖先は乾燥した環境に適応しているため、湿度の高い環境では本能的に活動を控える傾向があります。
隠れたがる行動の増加
雨の日は猫が暗い場所や狭い場所に隠れることが多くなります。これは野生時代の生存本能の現れです。雨に濡れることは体温低下につながり、特に砂漠出身の猫にとっては生命の危険を意味していました。そのため、雨を避けられる安全な場所を本能的に探そうとするのです。
室内飼いの猫でも、以下のような隠れ場所を選ぶ傾向が見られます。
- クローゼットの中
- ベッドの下
- キャットハウス
- 普段あまり使わない暗い場所
これは雨の音や湿気から身を守ろうとする自然な反応です。
鳴き方や甘え方の変化
雨の日には、普段とは異なる鳴き方をする猫もいます。不安そうに鳴いたり、逆にいつもより甘えるように鳴いたりする行動が見られます。これは気圧の変化や雨音による不安感、そして飼い主に安心感を求める心理的な反応と考えられています。
特に、雨音に敏感な猫は落ち着かない様子を見せることがあります。優れた聴覚を持つ猫にとって、雨音は時として不快なノイズとなり、ストレスの原因になることもあるのです。
気圧変化が猫の体調に与える影響

雨の日の低気圧は、猫の身体にさまざまな影響を与えます。これは「気象病」と呼ばれる現象で、人間だけでなく猫にも起こることが知られています。
気圧による身体的な影響
血管拡張と神経への圧迫
低気圧になると、猫の体にかかる外部からの圧力が減少します。すると体内の血管が拡張し、血管が膨らんだ分だけ周囲の神経や関節を圧迫することになります。これは、山の上でお菓子の袋がパンパンに膨らむのと同じ現象が体内で起きている状態です。
特に、頭部の血管拡張は頭痛を引き起こし、関節周辺の血管拡張は関節痛や古傷の痛みを悪化させる可能性があります。猫は痛みを隠す習性があるため、飼い主が気づかないうちに不快感を感じている場合があります。
内耳への影響と自律神経の乱れ
猫の内耳には気圧の変化を感知するセンサーがあります。急激な気圧の変化は内耳を刺激し、自律神経系に影響を与えます。この結果、体温調節機能や消化機能に乱れが生じ、全身のだるさや不調を感じるようになります。
研究によると、気圧の変化は猫の呼吸パターンや気管支の収縮にも変化をもたらすことが確認されており、低気圧が猫の体調に直接的な影響を及ぼしていることが科学的にも証明されています。
食欲や排泄への影響
食欲不振のメカニズム
低気圧の日は、多くの猫で食欲が低下します。主な要因は以下の通りです。
- 血流悪化: 消化器官の働きが鈍くなり食欲が減退
- 活動量低下: 消費エネルギーが減るため体が食事量を調整
- 湿度の影響: 体内の水分を外に逃がしにくくなりさらに食欲不振が進行
特に、普段から水分摂取量の少ない猫は、湿気の多い日により一層水を飲まなくなる傾向があります。
排泄行動の変化
気圧の変化は、猫の排泄行動にも影響を与えることがあります。自律神経の乱れにより腸の動きが鈍くなり、便秘気味になる猫もいます。また、腎臓の機能も気圧の影響を受けやすく、特に腎臓疾患を抱えるシニア猫では症状の悪化が見られることがあります。
→【腎臓病についてはこちら】
低気圧による血管拡張で血流が悪くなると、腎臓が血液をろ過する機能が低下し、体内に本来排出されるべき老廃物が蓄積しやすくなります。これにより、尿の回数や量に変化が現れることも ります。猫は体調不良を隠す習性があるため、排泄の変化は重要な健康チェックポイントとなります。

雨の日の猫のストレス軽減方法

雨の日の猫の不調を理解したところで、飼い主ができる具体的なケア方法について見ていきましょう。適切な環境づくりとケアにより、愛猫が快適に過ごせるようサポートできます。
環境づくりのポイント
快適な休息場所の提供
雨の日は猫が長時間休息するため、快適な寝床の確保が重要です。以下の点に注意して環境を整えましょう。
- 場所: 暗くて静かな場所を選ぶ
- 寝具: 柔らかいブランケットやクッションを用意
- 選択肢: 複数の休息場所を設ける
- 音対策: 雨音が聞こえにくい部屋の奥やクローゼットの一角を活用
- 温度管理: 適度な温度を保つ(25〜28度程度)
湿度が高い日は体感温度が上がりやすいので、エアコンの除湿機能を使って快適な環境を維持しましょう。
室内の湿度管理
梅雨時期の湿度は75%程度まで上昇することがあり、これは猫にとってかなり不快な環境です。湿度が高いと猫の毛が水分を含んで重くなり、体温調節も困難になります。
除湿器やエアコンの除湿機能を活用し、湿度を50〜60%程度に保つことで、猫の不快感を大幅に軽減できます。ただし、急激な室温変化は避け、猫が快適に過ごせる25〜28度程度を目安に温度調節を行いましょう。
飼い主ができるケア方法
適度な刺激の提供
雨の日は活動量が低下するため、運動不足やストレス蓄積を防ぐために、室内での軽い運動や遊びを取り入れることが効果的です。ただし、無理に活発に動かそうとする必要はありません。
おすすめの室内活動
- 猫じゃらしを使った軽い遊び
- レーザーポインターでの運動
- 新しいおもちゃの提供
猫が自分のペースで楽しめる刺激を用意してあげましょう。遊びたがらない場合は無理強いせず、猫の様子を見ながら調整することが大切です。
スキンシップとブラッシングの工夫
雨の日は猫が甘えたがることが多いので、優しいスキンシップで安心感を与えてあげましょう。ただし、猫が隠れたがっているときは、そっとしておくことも重要です。
湿気で毛がべたつきやすい日は、ブラッシングで毛並みを整えてあげると猫が快適に過ごせます。ブラッシングは血行促進効果もあり、気圧による体調不良の軽減にも役立ちます。ただし、猫が嫌がる場合は無理をせず、短時間で済ませるようにしましょう。
水分補給への配慮も忘れずに行いましょう。雨の日は水を飲みたがらない猫も多いので、ウェットフードを活用したり、水に少しぬるま湯を混ぜて飲みやすくしたりする工夫が効果的です。
注意すべき症状と獣医師への相談タイミング

雨の日の行動変化の多くは自然な反応ですが、中には病気のサインが隠れている場合もあります。通常の気象による影響と、医学的な注意が必要な症状を正しく見分けることが重要です。
通常の行動変化と異常な症状の見分け方
雨の日の正常な行動変化
以下のような特徴が見られる場合は、通常の気象による影響と考えられます。
- 猫が寝場所を移動している
- 撫でると反応がある
- 雨が止むと徐々に活動的になる
- 食欲は減退しても完全に失われるわけではない
注意すべき異常な症状
以下の症状が見られる場合は医学的な注意が必要です。
- 24時間以上全く動かない状態が続く
- 触られることを極端に嫌がり唸ったり攻撃的になる
- 完全に食事を拒否する状態が2日以上続く
- 嘔吐や下痢などの消化器症状が現れる
- 呼吸が浅く速い、または明らかに苦しそう
特に注意が必要なのは、特定の部位を触ったときに痛がる反応を示す場合です。これは急性の痛みを示すサインで、すぐに動物病院での診察が必要です。
緊急性の高い症状
以下の症状が見られた場合は、雨の日の一般的な体調不良ではなく、緊急性の高い病気の可能性があります。
呼吸器系の異常
- 呼吸困難や開口呼吸
- 猫が口を開けて呼吸している状態 ※心臓病や呼吸器疾患の急性悪化が疑われます
排泄系の異常
- 全く排尿していない状態が12時間以上続く ※特に雄猫では尿路閉塞の可能性があり、生命に関わる危険な状態です
神経系の異常
- 意識レベルの低下
- 呼びかけに反応しない状態
- けいれん
- 異常な姿勢(背中を丸めて動かない、特定の姿勢で固まるなど)
これらの症状は緊急性が高いため、すぐに動物病院での診察を受けてください。
獣医師への相談が必要なケース
以下の場合は、緊急性は高くないものの、獣医師への相談を検討すべきです:
繰り返す症状
- 雨の日の度に同じような体調不良を繰り返す
- 慢性的な病気が隠れている可能性(特にシニア猫や持病のある猫)
- 気圧の変化により既存の病気が悪化する場合
食事・水分摂取の異常
- 食欲不振が3日以上続く
- 普段より明らかに水分摂取量が増加または減少している
排泄の変化
- 排泄の回数や性状に明らかな変化が見られる
- 嘔吐が繰り返される
行動面の変化
- 攻撃性の増加
- 普段とは全く違う場所に隠れるようになった
- 飼い主との接触を完全に避けるようになった
これらの症状は、ストレス以外の要因が関与している可能性があります。日頃から愛猫の雨の日の様子を観察し、「いつもの雨の日と違う」と感じたら、早めに動物病院に相談することをお勧めします。気象病と病気の境界線は曖昧な場合が多いため、飼い主の直感も重要な判断材料となります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 雨の日に猫がいつもより長時間眠っているのは病気でしょうか?
A1. 雨の日に睡眠時間が増えるのは多くの猫に見られる正常な反応です。狩猟動物としての本能や、太陽光不足によるメラトニンの影響によるものです。ただし、寝場所を移動せず全く動かない、触っても反応しないといった症状がある場合は注意が必要です。
Q2. 雨の日に猫が食べなくなりました。どのくらい様子を見て大丈夫ですか?
A2. 雨の日の軽度な食欲低下は正常ですが、完全に食事を拒否する状態が2日以上続く場合は獣医師への相談をお勧めします。また、水分も全く摂取しない場合は、より早めの相談が必要です。ウェットフードを使って水分も一緒に摂取させる工夫も効果的です。
Q3. 雨の日に限って猫が攻撃的になるのはなぜですか?
A3. 気圧の変化による体調不良や、雨音によるストレス、湿気による不快感が原因として考えられます。一時的なものであれば様子を見ても良いですが、攻撃性が激しい場合や継続する場合は、痛みが原因の可能性もあるため獣医師に相談してください。
Q4. 子猫と成猫で雨の日の反応に違いはありますか?
A4. はい、違いがあります。子猫は好奇心が本能より勝ることがあり、雨の日でも元気に遊び回ったり、雨粒や雨音に興味を示したりすることがあります。一方、成猫やシニア猫ほど雨の日の影響を強く受け、静かに過ごす傾向があります。
Q5. 梅雨の時期は毎日猫の調子が悪そうです。何か対策はありますか?
A5. 除湿器やエアコンの除湿機能を使って湿度を50〜60%に保つことが最も効果的です。また、複数の休息場所を用意し、猫が快適に過ごせる環境を整えてください。毎年同じ症状が続く場合は、隠れた病気がある可能性もあるため、獣医師に相談することをお勧めします。
Q6. 室内飼いの猫でも雨の日の影響を受けますか?
A6. はい、受けます。室内飼いでも気圧の変化や湿度の影響を受けるためです。ただし、外に出る猫に比べると影響は軽微で、適切な湿度管理により症状を大幅に軽減できます。完全室内飼いの方が天候による体調変化をコントロールしやすいというメリットがあります。
まとめ

雨の日の猫の行動変化は、気圧による身体的な影響と、狩猟動物としての本能的な反応が組み合わさった自然な現象です。よく眠る、活動量が低下する、隠れたがるといった行動は、多くの場合心配する必要はありません。
重要なのは、愛猫の「いつもの雨の日の様子」を把握しておくことです。湿度管理や快適な休息場所の提供といった環境づくりと、適度なスキンシップで猫の不快感を軽減できます。
ただし、完全に食事を拒否する、24時間以上動かない、呼吸困難などの症状が見られる場合は、すぐに獣医師に相談してください。気象病と病気の見分けが難しい場合も多いため、「いつもと違う」と感じたら早めの相談をお勧めします。
雨の日は猫にとって自然な「休息日」と考え、無理をさせずゆっくり過ごさせてあげることが、愛猫の健康と幸せにつながります。
参考文献・参照記事リスト
この記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました:
獣医学・医学関連
- ねこのきもち獣医師相談室「天気に大きく左右される!? 『雨の日』の猫の気持ちと行動の変化」
- 獣医師監修による猫の雨の日の行動変化に関する専門的解説
- URL: https://cat.benesse.ne.jp/withcat/content/?id=70159
- 頭痛ーる(気象病専門サイト)「ペットと気象病 Vol.2:雨の日は猫の元気がない。気象病の可能性はある?」
- 獣医師による猫の気象病に関する医学的見解
- URL: https://zutool.jp/column/pet/post-34428
- ペテモ動物病院「獣医師監修:雨が多い梅雨時、猫が眠くなりやすいって本当!?」
- 獣医師歴27年の専門家による梅雨時期の猫の体調変化の解説
- URL: https://dictionary.petsallright.net/archives/5244
- ルートヴィヒ・マクシミリアン大学研究「Evaluation of barometric whole-body plethysmography for therapy monitoring in cats with feline lower airway disease」
- 気圧の変化が猫の呼吸に与える影響に関する学術研究
- 参照元: Yahoo!ニュース エキスパート記事内で引用
動物行動学・猫の生態関連
- にゃんペディア「雨の日、猫は眠くなる?」
- 猫の狩猟本能と雨の日の行動変化の関係性
- URL: https://nyanpedia.com/post-7930/
- ペトコト(PETOKOTO)「猫は雨が嫌い?雨の日によく寝る、元気がない理由などを紹介」
- 動物行動学的観点からの猫の雨の日の行動解説
- URL: https://petokoto.com/articles/3293
- ねこちゃんホンポ「雨の日は猫もダルい?晴れの日との違いと対策」
- 獣医師監修による雨の日の猫のケア方法
- URL: https://nekochan.jp/healthcare/article/8600
- ねこちゃんホンポ「猫が雨の日に暴れる理由3つ」
- 獣医師監修による雨の日の猫の異常行動について
- URL: https://nekochan.jp/behavior/article/13717
気象と動物の関係
- Yahoo!ニュース エキスパート「『猫が顔を洗うと雨が降る』には根拠があった?!人だけのものじゃない『猫の気象病』のケア方法」
- サイエンスライターによる気圧変化と猫の関係の科学的解説
- URL: https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/1a08a206cdede0eacc4c31b4a699151566489f2d
- 愛玩動物救命士養成講座「『低気圧』がペットにもたらす身体の変化を知る」
- ペット専門家による低気圧の身体への影響
- URL: https://www.propet.jp/about/advice/advice11/
- ネコセカイ necosekai「猫さんと雨」
- 北海道大学の気圧変動研究を含む猫と天候の関係
- URL: https://necosekai.net/?p=11528
- 猫まっしぐら「猫と雨の不思議な言い伝え」
- 猫の毛の特性と雨の日の行動について
- URL: https://wargo.jp/blogs/neko-column/cat_rain_lore
その他の専門情報
- ねこのきもちWEB MAGAZINE「『雨の日は猫の動きが鈍くなる』雨と関係している猫のしぐさ」
- 哺乳動物学者監修による猫の行動解説
- URL: https://cat.benesse.ne.jp/lovecat/content/?id=112876
- necoichi「もしかしてしんどいの?雨の日に猫がよく眠る理由とは?」
- 猫の雨の日の体調変化について
- URL: https://www.necoichi.co.jp/Blog/detail/id=7431
注意事項
- 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医学的アドバイスではありません
- 愛猫の健康状態に不安がある場合は、必ず獣医師にご相談ください
- 記事内容は2025年8月時点の情報に基づいています



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