【獣医師監修】猫の口内炎、見逃しがちな3つの初期サインと今日からできるケア術

健康・医療

はじめに

愛猫の食欲が落ちた、口臭が気になる、よだれが増えた…。これらは猫の口内炎の初期サインかもしれません。猫の口内炎は単なる「口の中の痛み」ではなく、放置すると食事ができなくなり、体重減少や衰弱を招く深刻な病気です。

飼い猫の約26%が経験するといわれる口内炎ですが、猫は痛みを隠す習性があるため、症状が進行するまで気づかれないことが多いのです。人間の口内炎とは異なり、猫の場合は口腔内に広範囲に炎症が広がることが特徴です。

この記事では、口内炎の初期段階で見逃しがちなサインと、その原因、自宅でできる予防法についてご紹介します。愛猫の健康を守るためにぜひ参考にしてください。

猫の口内炎とは?種類と原因を知ろう

猫の口内炎の主な種類と特徴

猫の口内炎とは、口腔内の粘膜に炎症が起こる病気です。歯肉(歯ぐき)、舌、頬の内側などに炎症や潰瘍が発生します。人間の口内炎は部分的に小さな潰瘍ができる程度ですが、猫の場合は口腔内全域に広がることが多いのが特徴です。

猫の口内炎は主に2種類に大別されます

  1. 一般的な口内炎:歯肉や舌、頬の内側などに限定した炎症で、比較的治療に反応しやすいタイプです。
  2. 難治性口内炎:口腔内全体、特に喉の奥までおよぶ広範囲な炎症で、治療が難しいタイプです。強い痛みを伴い、抜歯などの外科的処置が必要になることもあります。

炎症を起こした部位は鮮やかな赤色を呈し、進行すると潰瘍状になり、出血しやすくなります。

口内炎が発症する原因と危険因子

猫の口内炎の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、主な要因として以下が考えられています

  1. ウイルス感染:猫カリシウイルス、猫ヘルペスウイルスなどの感染が関与していることが多いです。
    【猫カリシウイルスについてはこちら】
  2. 免疫力の低下:猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)などの感染症、慢性腎臓病や糖尿病などによって免疫力が低下すると発症リスクが高まります。
    【猫白血病ウイルス(FeLV)についてはこちら】
  3. 口腔内の細菌環境の変化:歯垢や歯石が蓄積すると、細菌バランスが崩れ、炎症を引き起こします。
  4. 遺伝的要因:一部の猫は体質的に口内炎になりやすいとも考えられています。

フードの種類では、ウェットタイプを主食にしている猫の方が、歯周病の発症率が高く、それに伴って口内炎のリスクも高まる可能性があるとされています。

見逃しがちな口内炎の3つの初期サイン

猫の口内炎は進行してから気づかれることが多いものです。早期発見のためには、以下の3つの初期サインを見逃さないようにしましょう。

行動の変化から見る初期症状

  1. 食べ方の変化
    • 食べ物を口に入れた後、急に中断する
    • 食事中に変な鳴き声を出す
    • 硬いフードを避け、柔らかいものを好むようになる
    • 片側だけで噛む、または丸呑みする
  2. 口元を気にする仕草
    • 前足で口や顔を頻繁にこする
    • 口をくちゃくちゃさせる
    • 頭を振る動作が増える
    • 口元を触られるのを極端に嫌がる
  3. 毛づくろいの減少
    • 毛並みが悪くなり、ツヤがなくなる
    • 毛玉が増える
    • 体が全体的に汚れてくる

これらの行動変化は口内炎以外の病気でも見られることがありますが、複数の症状が同時に現れる場合は注意が必要です。

口元の観察で気づける兆候

口内炎の外見上の初期サインとしては、以下のような症状があります:

  1. よだれの増加:口内炎の痛みでよだれを飲み込みづらくなると、口からよだれが垂れます。進行すると血が混じることも。
  2. 口臭の悪化:健康な猫の息は基本的に無臭です。口臭が強くなる場合は、口内の炎症で細菌が増殖している可能性があります。
  3. 口腔内の変化
    • 歯ぐきが赤く腫れている
    • 舌や頬の内側が赤くなっている
    • まだらな赤い斑点や「赤い石畳」のような見た目

これらの症状は進行すると悪化し、食欲不振や体重減少、脱水などの深刻な症状につながります。少しでも異変を感じたら、すぐに獣医師に相談することをお勧めします。

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獣医師が解説する口内炎の診断と治療法

猫の口内炎を疑う症状が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。

口内炎の一般的な治療プロセス

1. 診断

獣医師は以下のような検査を行います

  • 口腔内の視診:歯ぐきや口腔粘膜の状態を確認します。
  • 血液検査:猫エイズ(FIV)や白血病ウイルス(FeLV)の感染の有無、腎臓・肝臓の機能などをチェックします。
  • X線検査:歯や顎の骨に異常がないか調べます。

2. 基本的な治療

診断結果に基づき、以下のような治療が行われます

  • 口腔内の清掃と歯石除去:全身麻酔下で歯石を除去し、口腔内を清潔にします。
  • 薬物療法:抗生物質、抗炎症剤、鎮痛剤などを使用して症状を緩和します。
  • 栄養サポート:食べやすい柔らかいフードを提供します。

重症度別の治療アプローチ

1. 軽度から中程度の場合

  • 内科治療(抗生物質や消炎鎮痛剤の投与)
  • 免疫調整薬の使用
  • 局所治療(口腔内洗浄薬や歯磨き剤)を併用

2. 重度または難治性の場合

  • 抜歯治療:問題のある歯を部分的に抜歯したり、全臼歯抜歯や全顎抜歯を行うこともあります。歯が炎症の原因となっている場合、抜歯で症状が劇的に改善することがあります。
  • ステロイド療法:炎症を抑えるため、ステロイド剤を使用することがあります。
  • 免疫抑制剤:免疫反応が過剰な場合に用いることがあります。
  • 幹細胞治療:最新の治療法として、間葉系幹細胞を用いた細胞治療が試みられています。

猫の口内炎、特に難治性のものは完治が難しい場合もあります。しかし、適切な治療によって症状を管理し、猫の生活の質を向上させることは可能です。治療法の選択は、猫の状態によって異なるため、獣医師としっかり相談しながら進めることが大切です。

今日から始められる口内炎予防とケア方法

猫の口内炎は完全に予防することは難しいですが、日常的なケアによってリスクを減らすことができます。

日常的な口腔ケアの実践方法

1. 歯磨きの習慣化

猫の歯磨きは口内炎予防の基本です。理想的には毎日、難しい場合でも週に2〜3回は実施しましょう。

  • 歯磨きに慣らすステップ
    • まずは口元を触ることに慣れさせる
    • 指で歯や歯ぐきを触れるようにする
    • 猫用歯磨き粉を指につけて歯をなでる
    • 猫用歯ブラシを導入する
  • 歯磨きのコツ

2. 歯磨き以外のオーラルケア方法

歯磨きを嫌がる猫には、以下の代替方法も効果的です:

定期的に口腔内をチェックする習慣をつけ、歯ぐきの色や腫れ、口臭の変化などに注意しましょう。

口内炎に配慮した食事選びのポイント

1. フードの選択

  • ドライフードの活用:噛む動作で歯の表面が自然に清掃される効果があります。
  • すでに口内炎がある場合は、柔らかいウェットフードを選びましょう。
  • 予防段階では適度に硬いドライフードが効果的です。

2. 口内炎の猫におすすめのフード

口内炎で痛みがある猫には、以下のような商品が適しています:

3. 免疫力をサポートする栄養素

  • 抗酸化物質(ビタミンE、C)を含む食事
  • オメガ3脂肪酸(炎症を抑える効果)
  • 良質なタンパク質(免疫機能の維持)

4. 水分摂取の確保

十分な水分摂取は口内環境を清潔に保つのに役立ちます。水飲み場は常に清潔にし、新鮮な水を用意しましょう。

口内炎の予防には、ワクチン接種も重要です。猫カリシウイルスなどの感染症は口内炎の原因となるため、適切なワクチン接種を行いましょう。また、年に1〜2回は獣医師による専門的な歯のケアを受けることも大切です。
【ワクチン接種の重要性についてはこちら】

よくある質問(Q&A)

Q1: 猫の口内炎は完治するの?

A: 猫の口内炎、特に難治性口内炎は完全に治癒させることが難しい場合があります。しかし、適切な治療とケアによって症状をコントロールし、猫の生活の質を向上させることは可能です。軽度の口内炎であれば、原因の除去(歯石除去や抗生物質投与など)で症状が改善することもあります。一方、難治性の場合は全臼歯抜歯や全顎抜歯といった外科的処置が必要になることもあります。いずれにせよ、早期発見・早期治療が重要で、適切な治療によって多くの猫が快適に過ごせるようになります。

Q2: 口内炎のある猫の食事で注意すべきことは?

A: 口内炎を抱える猫の食事は、痛みを最小限に抑え、必要な栄養を摂取できるように配慮しましょう。以下のポイントが重要です

  • 柔らかいウェットフードやムース状のフードを提供する
  • 小さく分けたり、温めたりして食べやすくする
  • 痛みが強い場合は、獣医師の指示のもと鎮痛剤を使用しながら食事させる
  • 食欲が落ちている場合は、強い香りのフードや猫の好物を少量から試してみる
  • 水分摂取を促すため、水やスープを多めに与える
  • 免疫力をサポートする栄養素を含むフードを選ぶ 口内炎が治療中の場合は、食事の内容や方法について獣医師に相談し、適切な栄養管理を行うことが大切です。

Q3: 口内炎の予防に効果的なサプリメントはある?

A: 猫の口内炎予防に役立つ可能性のあるサプリメントとしては、以下のようなものがあります:

  • プロバイオティクス:腸内環境を整え、免疫機能をサポートします
  • オメガ3脂肪酸:炎症を抑制する効果があります
  • ビタミンC・E:抗酸化作用があり、免疫力をサポートします
  • デンタルケアサプリメント:粉末状やふりかけタイプで、口腔内の細菌バランスを整えます

ただし、サプリメントは補助的な役割であり、基本的なケア(歯磨きや定期検診)の代わりにはなりません。また、サプリメントの使用前には獣医師に相談し、猫の健康状態や他の薬との相互作用について確認することが重要です。

Q4: 猫の口内炎と歯周病の違いは?

A: 猫の口内炎と歯周病は、どちらも口腔内の疾患ですが、以下のような違いがあります:

歯周病

  • 主に歯と歯肉の境目(歯周ポケット)に発生
  • 歯垢や歯石の蓄積が主な原因
  • 歯肉の炎症から始まり、進行すると歯を支える骨が溶けていく
  • 適切なケアで予防・改善できることが多い

口内炎

  • 歯肉だけでなく、頬の内側、舌、喉の奥などより広い範囲に炎症が及ぶ
  • ウイルス感染や免疫系の異常など、複雑な要因が関与
  • 特に難治性の場合、歯がなくても炎症が続くことがある
  • 治療が難しく、長期的な管理が必要なことが多い

両者は併発することも多く、歯周病が口内炎の悪化要因になることもあります。どちらも早期発見・早期治療が重要で、定期的な獣医師によるチェックが推奨されます。
【歯周病について詳しくはこちら】

Q5: 猫の口内炎が治らない場合、次に考えるべき対処法は?

A: 一般的な治療で改善が見られない難治性の口内炎の場合、以下のような選択肢を検討する必要があります

  1. 専門医への相談:歯科専門医がいる動物病院での診察を検討しましょう。
  2. 全顎抜歯:すべての歯を抜くという選択肢も。歯が炎症の原因となっている場合、抜歯後に大幅に症状が改善することがあります。
  3. 免疫調整療法:サイクロスポリンなどの免疫抑制剤や調整剤を用いた治療法を検討します。
  4. 幹細胞治療:従来の治療に反応しない症例に対して、間葉系幹細胞を用いた再生医療が行われることもあります。
  5. ホームケアの見直し:食事内容の変更や口腔ケア方法の改善、環境ストレスの軽減など、生活環境全体を見直します。

どの選択肢も、個々の猫の状態や病状の進行度によって適合性が異なります。複数の治療選択肢とその期待される効果、リスク、費用などについて獣医師と十分に相談し、最適な治療法を選択することが大切です。症状が改善しない場合でも、あきらめずに別の治療法を試すことで、状態が改善する可能性もあります。

まとめ

猫の口内炎は放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性のある病気です。食べ方の変化、口元を気にする仕草、毛づくろいの減少などの行動変化は口内炎の初期サインとして見逃さないようにしましょう。また、よだれの増加、口臭の悪化、口腔内の変化といった外見上の変化にも注意が必要です。

口内炎の予防と管理には、日常的な口腔ケアが不可欠です。歯磨きの習慣化や適切なフード選び、定期的な獣医師によるチェックなど、継続的なケアが愛猫の健康を守ります。抵抗する猫には、少しずつ慣らしていく工夫や、歯磨き以外のオーラルケア方法も検討しましょう。

早期発見と適切な対応により、症状を軽減し、猫の生活の質を高めることができます。少しでも異変を感じたら、迷わず獣医師に相談してください。愛猫のお口の健康は、全身の健康につながります。

参考文献・参照記事リスト

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  4. KINS WITH 動物病院 (2024). 「猫の口内炎。原因と症状、治療について画像で解説(犬猫の歯医者監修)」. https://kinswith-vet.com/journal/1460/
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  9. センターヴィル動物病院 (2021). 「猫の口内炎について」. https://www.centerville.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=24&Itemid=112
  10. 次郎丸動物病院 (2024). 「猫の口内炎の症状と原因、治療について|獣医師が解説」. https://jiroumaru-ah.com/case/case-dental/entry-93.html
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  12. Petio\[ペティオ\] (2020). 「猫の病気・体調不良のサインと健康チェック法」. https://www.petio.com/useful/index_cat/
  13. 若山動物病院 (2023). 「猫の口内炎とは?症状や治療法を解説」. https://dr-nyan.com/column/cat-stomatitis/
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  15. アニコム損保 (2023). 「猫の歯磨きのやり方、歯周病や歯石を予防するために正しい方法で!」. https://www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/187.html
  16. ビルバックジャパン (2023). 「猫の正しい歯磨き方法~歯周病予防に必要なケア~」. https://jp.virbac.com/advice/health-topics/cat-oral-health
  17. V・ドラッグ (2020). 「猫のオーラルケア | くすりんの豆知識」. https://www.vdrug.co.jp/customer/pickup/%E7%8C%AB%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%82%A2/

 

【この記事の監修者】
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長

群馬県出身。ヤマザキ動物専門学校卒業後、麻布大学獣医学部を修了。埼玉県と東京都の動物病院で勤務した経験を持つ。

獣医師・動物看護士・トリミング・ドッグトレーナーの資格を有し、あらゆる面でペットとその飼い主をサポート。生活の悩みから病気やケガに至るまで、幅広い相談に応じる。

過去に飼っていた動物として、ツキノワグマ、リスザル、ニオイカメ、魚、鳥、フクロモモンガ、ハムスター、シマリスなど、多種多様な動物たちと共に過ごしてきました。

院長を務める動物病院「富士見台どうぶつ病院」

住所:東京都中野区上鷺宮4-15-6
電話番号:03-3825-1111
診療時間:午前9:00〜12:00 午後16:00〜19:00
休診日:木曜日
診療対象:犬、猫、うさぎ、ハムスター、フェレット(その他の種類はお問合せください)
※お電話でのご予約は受付けておりません。

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