猫の緑内障の原因と治療法【獣医師が解説】

健康・医療

はじめに

猫の緑内障は、眼圧が上昇することで視神経が損傷し、放置すると失明につながる深刻な病気です。早期発見と適切な治療が重要ですが、初期段階の症状は飼い主さんが見逃しやすいこともあります。この記事では、獣医師の解説を交えながら、猫の緑内障の原因と治療法について詳しく説明します。

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緑内障とは?発症メカニズムと症状

緑内障は、眼圧が異常に上昇することで視神経が損傷を受ける病気です。早期発見と適切な治療が重要ですが、初期段階の症状は飼い主さんが見逃しやすいこともあります。
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緑内障の発症メカニズム

緑内障は、以下のようなメカニズムで発症します。

  1. 房水の流れの障害
    • 眼球内には、房水と呼ばれる透明な液体が循環している
    • 房水の流れが滞ると、眼圧が上昇する
  2. 眼圧の上昇
    • 房水の流れが滞ることで、眼球内の圧力が異常に高くなる
    • 高い眼圧が持続すると、視神経が圧迫される
  3. 視神経の損傷
    • 視神経は、眼球から脳に視覚情報を伝える重要な神経
    • 高い眼圧による視神経の圧迫が持続すると、視神経が損傷を受ける
  4. 視機能の低下と失明
    • 視神経の損傷が進行すると、視野が狭くなったり、視力が低下したりする
    • 適切な治療を行わないと、最終的には失明に至ることがある

このように、緑内障は房水の流れの障害から始まり、眼圧の上昇、視神経の損傷を経て、視機能の低下や失明に至る病気です。

緑内障の症状

緑内障の症状は、病期によって異なります。初期段階では、飼い主さんが気づきにくい症状もあります。

  1. 初期の症状
    • 目の充血:結膜が赤く充血している
    • 目の痛み:眼球の奥の痛みを訴えることがある
    • 瞳孔の拡大:瞳孔が通常より大きくなっている
  2. 進行期の症状
    • 目の腫れ:眼球が腫れぼったくなる
    • 角膜の混濁:角膜が白く濁ってくる
    • 視力の低下:ぶつかりやすくなったり、物が見えにくくなったりする
  3. 末期の症状
    • 失明:完全に視力を失う
    • 眼球の拡大:眼球が大きくなり、眼球破裂の危険性がある

これらの症状は、猫の個体差や緑内障のタイプによって異なることがあります。片眼だけに症状が出る場合と、両眼に出る場合があります。

飼い主さんが日頃から猫の目の様子を観察し、少しでも異変を感じたら、速やかに獣医師に相談することが大切です。早期発見と適切な治療が、緑内障による視機能の低下や失明を防ぐために重要です。

緑内障の原因と種類

猫の緑内障は、原因によっていくつかのタイプに分類されます。原因を特定することは、適切な治療方針を決定するために重要です。

原発性緑内障

原発性緑内障は、眼球内の構造的な異常が原因で発症します。

  1. 先天性緑内障
    • 生まれつき、房水の流れが阻害されている
    • 若い猫に多く見られる
  2. 原発開放隅角緑内障
    • 隅角(房水の排出経路)が開いているが、房水の流れが滞る
    • 中高齢の猫に多く見られる
  3. 原発閉塞隅角緑内障
    • 隅角が狭くなったり、閉塞したりすることで、房水の流れが滞る
    • シャムやヒマラヤンなどの特定の品種に多く見られる

続発性緑内障

続発性緑内障は、他の眼疾患や全身疾患が原因で発症します。

  1. 炎症による続発性緑内障
    • ぶどう膜炎などの眼内の炎症が原因で発症する
    • 炎症により、房水の流れが滞る
  2. 腫瘍による続発性緑内障
    • 眼内や眼窩内の腫瘍が、房水の流れを阻害する
    • 腫瘍の種類や大きさによって、症状の重症度が異なる
  3. 白内障による続発性緑内障
    • 白内障が進行し、水晶体が膨張することで、房水の流れが滞る
    • 高齢の猫に多く見られる
  4. 全身疾患による続発性緑内障
    • 高血圧や糖尿病などの全身疾患が、眼圧上昇の原因となる
    • 全身疾患のコントロールが、緑内障の治療に重要となる

外傷性緑内障

外傷性緑内障は、眼球への外傷が原因で発症します。

  1. 鈍的外傷による緑内障
    • 眼球への強い打撃により、房水の流れが阻害される
    • 交通事故や喧嘩などで発生することがある
  2. 穿通性外傷による緑内障
    • 眼球を貫通する傷により、房水の流れが阻害される
    • 猫の爪や尖ったものによる傷で発生することがある

緑内障の原因を特定するために、獣医師は詳細な眼科検査と全身検査を行います。原因に応じた適切な治療を行うことが、視機能を保護し、緑内障の進行を抑えるために重要です。飼い主さんは、猫の目の状態に注意を払い、異変があれば速やかに獣医師に相談しましょう。また、定期的な健康診断で、早期の段階で緑内障を発見することも大切です。

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緑内障の診断と治療方法

緑内障は進行が速く、放置すると失明につながる可能性があるため、早期発見と適切な治療が重要です。獣医師は、症状や検査結果を総合的に判断して、緑内障の診断を行い、最適な治療方針を決定します。

緑内障の診断方法

緑内障の診断には、以下のような方法が用いられます。

  • 眼圧測定(トノメトリー):眼圧を測定し、正常範囲(15〜25mmHg)を超えていないかを確認する。
  • 眼底検査(検眼鏡検査):眼底カメラや特殊な器具を用いて、視神経乳頭や網膜の状態を観察する。
  • 隅角検査(ゴニオスコピー):隅角鏡を用いて、房水の排出経路である隅角の状態を観察する。
  • 超音波検査:眼球内の構造を詳細に観察し、腫瘍や水晶体の異常を確認する。

これらの検査を組み合わせることで、緑内障の原因や病期を特定し、適切な治療方針を決定します。

緑内障の治療方法

緑内障の治療は、原因や病期に応じて、薬物療法、手術療法、またはその組み合わせが選択されます。

  • 薬物療法
    • 点眼薬:プロスタグランジン関連薬、β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬などを用いて、房水の産生を抑制し、眼圧を下げる。
    • 全身投与薬:炭酸脱水酵素阻害薬やマンニトールを全身投与し、眼圧を下げる。
  • 手術療法
    • レーザー手術:隅角にレーザーを照射し、房水の排出を促進する。
    • シャント手術:眼球内に人工的な排出路を作成し、房水の流れを改善する。
    • 眼球摘出術:失明した眼球や、極度に眼圧が上昇した眼球を摘出する。

治療の選択は、緑内障のタイプ、病期、猫の全身状態などを考慮して行われます。早期発見と適切な治療開始が、視機能の保護と維持に役立ちます。

飼い主さんの役割

緑内障の治療には、飼い主さんの協力が不可欠です。

  • 投薬の管理:点眼薬や内服薬を処方された通りに与える。
  • 通院と経過観察:定期的な通院で、治療の効果や副作用を確認する。
  • 家庭でのケア:ストレス管理、バランスの取れた食事、安全な環境の提供など。

飼い主さんと獣医師が協力して、適切な治療とケアを行うことが、猫の緑内障の管理に役立ちます。早期発見と適切な治療が重要な疾患です。飼い主さんが猫の目の健康に注意を払い、異変があれば速やかに獣医師に相談することが大切です。定期的な健康診断と、獣医師との密な連携が、愛猫の視機能を守ることにつながります。

緑内障の予防と日常ケア

緑内障は早期発見と適切な治療が重要ですが、日常的な予防とケアも大切です。飼い主さんができる予防法と、愛猫の目の健康を維持するための日常ケアについて説明します。
→【猫の目を守る日常ケアはこちら】

定期的な健康診断

定期的な健康診断は、緑内障の早期発見に役立ちます。

  • 年に1回以上の健康診断を受ける。
  • 高齢猫や、緑内障のリスクが高い品種(シャム、ヒマラヤンなど)は、より頻繁な検査が推奨される。
  • 健康診断では、眼圧測定や眼底検査などを行い、緑内障の兆候がないかを確認する。

日常的な観察

飼い主さんが日常的に猫の目の状態を観察することも重要です。

  • 目の異変(充血、腫れ、目やにの増加など)に気づいたら、速やかに獣医師に相談する。
  • 猫の行動変化(視力低下によるぶつかり、目の痛みによる瞬目の増加など)にも注意を払う。
  • 異変の早期発見が、迅速な治療開始と視機能の保護につながる。

ストレス管理

ストレスは、緑内障の発症や進行に影響を与える可能性があるため、適切な管理が必要です。

  • 猫が安心できる環境を整える(清潔で快適な空間、ハイディングスペースの提供など)。
  • 適度な遊びとスキンシップで、猫とのコミュニケーションを図る。
  • 急な環境の変化を避け、猫のストレスを最小限に抑える。
    【猫のストレス管理はこちら】

バランスの取れた食事

バランスの取れた食事は、全身の健康維持に役立ち、緑内障のリスクを減らすことにつながります。

  • 猫の年齢や健康状態に合った、高品質のキャットフードを与える。
  • 必要な栄養素(タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルなど)が十分に含まれているか確認する。
  • 新鮮で清潔な水を常に提供する。

眼疾患の治療と管理

他の眼疾患(ぶどう膜炎、白内障など)は、続発性緑内障のリスクを高めるため、適切な治療と管理が必要です。

  • 眼疾患の兆候(目の充血、濁り、視力低下など)があれば、速やかに獣医師に相談する。
  • 処方された治療を守り、定期的な経過観察を受ける。
  • 眼疾患のコントロールが、続発性緑内障の予防につながる。

これらの予防法と日常ケアを実践することで、緑内障のリスクを減らし、愛猫の目の健康を維持することができます。

飼い主さんが猫の目の健康に注意を払い、異変があれば速やかに獣医師に相談することが大切です。また、獣医師との連携を密にし、適切な治療とケアを行うことが、緑内障の予防と管理に役立ちます。

猫の緑内障は、早期発見と適切な治療が重要な疾患です。飼い主さんの理解と協力が、愛猫の視機能を守る鍵となります。定期的な健康診断と日常ケアを通して、愛猫の目の健康を守りましょう。

まとめ

猫の緑内障は、眼圧が上昇することで視神経が損傷する深刻な病気です。先天性、続発性、外傷性、腫瘍性など、さまざまな原因で発症します。症状は、目の充血、腫れ、瞳孔の拡大、目の痛み、視力低下などです。診断には眼圧測定や眼底検査などが行われ、治療法は薬物療法、手術療法、眼球摘出術などがあります。予防には、定期健診とストレス管理、バランスの取れた食事が重要です。飼い主さんが日頃から猫の目の健康状態に注意を払い、異変があれば速やかに獣医師に相談することが大切です。適切な予防と早期発見・早期治療で、愛猫の緑内障を防ぎましょう。

【この記事の監修者】
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長

群馬県出身。ヤマザキ動物専門学校卒業後、麻布大学獣医学部を修了。埼玉県と東京都の動物病院で勤務した経験を持つ。

獣医師・動物看護士・トリミング・ドッグトレーナーの資格を有し、あらゆる面でペットとその飼い主をサポート。生活の悩みから病気やケガに至るまで、幅広い相談に応じる。

過去に飼っていた動物として、ツキノワグマ、リスザル、ニオイカメ、魚、鳥、フクロモモンガ、ハムスター、シマリスなど、多種多様な動物たちと共に過ごしてきました。

院長を務める動物病院「富士見台どうぶつ病院」

住所:東京都中野区上鷺宮4-15-6
電話番号:03-3825-1111
診療時間:午前9:00〜12:00 午後16:00〜19:00
休診日:木曜日
診療対象:犬、猫、うさぎ、ハムスター、フェレット(その他の種類はお問合せください)
※お電話でのご予約は受付けておりません。

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