はじめに
猫の白血病ウイルス感染症(FeLV)は、猫の健康を脅かす重大な感染症の一つです。この記事では、獣医師監修のもと、FeLVの症状、診断、治療、そして予防法について詳しく解説します。飼い主さんがFeLVについて正しく理解し、愛猫を守るための知識を身につけることを目的としています。
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VOICEVOX:四国めたん
Images:
Malignes Lymphom Niere Katze Sono by Kalumet, CC BY-SA 3.0 (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Malignes_Lymphom_Niere_Katze_Sono.jpg)
猫白血病ウイルス(FeLV)とは
猫白血病ウイルス(FeLV)は、猫の健康を脅かす重大なレトロウイルスの一つです。FeLVは、感染した猫の体内で増殖し、様々な病態を引き起こします。
FeLVの特徴
- レトロウイルス:
- FeLVは、RNAをゲノムとするレトロウイルスに属します。
- 感染細胞のDNAに組み込まれ、長期間にわたって持続感染します。
- 感染経路:
- FeLVは、主に感染猫との直接的な接触により伝播します。
- 感染猫の唾液、鼻汁、涙、母乳、排泄物などを介して広がります。
- 感受性の高い猫:
- 免疫力の低い子猫や高齢猫は、FeLVに感染しやすい傾向があります。
- 屋外飼育や多頭飼育の環境では、感染リスクが高くなります。
FeLV感染の段階
FeLV感染は、一般的に以下の3つの段階に分類されます。
- 一過性感染:
- ウイルスに曝露された後、一時的に感染が成立する段階です。
- 免疫力が十分な猫では、ウイルスを排除し、感染を克服することができます。
- 持続性感染:
- ウイルスが体内で増殖し、持続的に感染が成立する段階です。
- 持続性感染猫は、生涯にわたってウイルスを体内に保有し、他の猫への感染源となります。
- 潜伏感染:
- ウイルスが骨髄に潜伏し、一時的に感染が成立しない段階です。
- ストレスや免疫力の低下により、潜伏感染から持続性感染へ移行することがあります。
FeLVは、感染力が強く、感染猫の予後に大きな影響を与えるウイルスです。感染の段階に応じた適切な管理と治療が必要です。
FeLV感染の予防には、ワクチン接種と感染猫との接触の回避が重要です。特に、屋外飼育や多頭飼育の環境では、定期的なFeLV検査とワクチン接種が推奨されます。
FeLVは、猫の健康を脅かす重大な感染症の一つです。飼い主さんがFeLVについて正しく理解し、予防と管理に努めることが、愛猫の健康を守る上で重要です。獣医師との連携を密にし、適切な検査とケアを行いましょう。
→【ワクチン接種の重要性についてはこちら】
FeLV感染症の症状
FeLV感染症は、猫の免疫系に深刻な影響を及ぼし、様々な病態を引き起こします。感染初期は無症状のこともありますが、徐々に以下のような症状が現れます。
非特異的な症状
- 発熱
- 食欲不振
- 体重減少
- 元気消失
- リンパ節の腫脹
これらの症状は、FeLV感染症に特異的なものではありませんが、感染猫でよく見られる一般的な症状です。
免疫抑制に関連する症状
- 慢性的な上部気道感染症
- 口内炎や歯肉炎
- 皮膚感染症
- 膿瘍形成
- 日和見感染症
FeLVは、猫の免疫力を低下させるため、様々な感染症を引き起こしやすくなります。持続的な感染症や日和見感染症は、FeLV感染を示唆する重要な徴候です。
血液学的異常
- 貧血
- 白血球減少症
- 血小板減少症
FeLVは、骨髄に感染し、血球の生産を阻害します。その結果、貧血や白血球減少症、血小板減少症などの血液学的異常が生じます。
腫瘍性疾患
- リンパ腫
- 白血病
- 骨髄腫
FeLVは、がん遺伝子の活性化を引き起こし、リンパ腫や白血病などの腫瘍性疾患の発生リスクを高めます。
神経症状
- 歩行異常
- 痙攣
- 行動変化
FeLVは、脳や脊髄におけるリンパ腫を引き起こすことにより、神経症状を引き起こすことがあります。
免疫介在性疾患
- 腸炎
- 糸球体腎炎
- ぶどう膜炎
FeLV感染は、免疫系の異常を引き起こし、自己免疫疾患様の病態を生じさせることがあります。
これらの症状は、FeLV感染の段階や個体の免疫状態によって異なります。初期段階では無症状のこともありますが、感染が進行するにつれて、様々な症状が現れます。
FeLV感染が疑われる場合は、速やかに獣医師に相談し、適切な検査と治療を受けることが重要です。また、予防としてのワクチン接種と、感染猫との接触の回避が推奨されます。
FeLV感染症は、猫の健康と生命に関わる重大な疾患です。飼い主さんが症状を見逃さず、早期発見と適切な管理に努めることが、愛猫の健康を守る上で重要です。

FeLV感染症の診断と治療
FeLV感染症の診断と治療は、獣医師との緊密な連携のもとで行われます。早期発見と適切な管理が、感染猫のQOL向上と生存期間の延長に重要な役割を果たします。
FeLV感染症の診断
FeLV感染症の診断には、以下のような検査が用いられます。
- ELISA法:
- 血清中のFeLV p27抗原を検出する方法です。
- スクリーニング検査として広く用いられています。
- IFA法(間接蛍光抗体法):
- 血液塗抹標本を用いて、FeLV感染細胞を検出する方法です。
- ELISA法で陽性の場合、確定診断のために用いられます。
- PCR法:
- FeLVのDNAを検出する方法です。
- 感染の早期段階や潜伏感染の検出に有用です。
FeLV感染症の治療
残念ながら、FeLV感染を完全に排除する治療法は現在のところありません。治療の目的は、感染による症状の緩和と合併症の管理です。
- 対症療法:
- 発熱、食欲不振、貧血などの症状に対して、適切な治療を行います。
- 輸液療法、制吐剤、食欲増進剤などを用いて、全身状態の維持を図ります。
- 免疫調整療法:
- インターフェロンやサイトカイン、ステロイドなどを用いて、免疫機能の調整を試みます。
- 免疫抑制状態の改善により、日和見感染症の予防や症状の緩和が期待できます。
- 化学療法:
- リンパ腫や白血病などの腫瘍性疾患に対して、化学療法を行うことがあります。
- 腫瘍の進行抑制と症状の緩和を目的とします。
- 支持療法:
- 栄養管理、ストレス軽減、感染予防など、感染猫のQOL維持に努めます。
- 食事は、高カロリーで消化しやすいものを選択します。
- 感染猫は、他の猫から隔離し、ストレスを最小限に抑えます。
FeLV感染症の治療は、感染猫の状態に合わせて個別に調整されます。獣医師との密接な連携のもと、適切な治療方針を立てることが重要です。また、FeLV感染猫の飼育環境では、感染拡大の防止に細心の注意が必要です。感染猫の隔離、衛生管理の徹底、他の猫へのワクチン接種などが推奨されます。
FeLV感染症は、猫の健康と生命に関わる重大な疾患です。早期発見と適切な管理が、感染猫のQOL向上と生存期間の延長に重要です。飼い主さんが獣医師と連携し、愛猫の健康管理に努めることが大切です。
FeLV感染症の予防法
FeLV感染症は、感染力が強く、治療が困難な疾患であるため、予防が非常に重要です。以下のような予防法が推奨されます。
ワクチン接種
ワクチン接種は、FeLV感染症予防の中心的な役割を果たします。
- FeLVワクチンは、感染リスクの高い猫に推奨されます。
- 生後8週齢以降から接種を開始し、初回は2〜3回の接種が必要です。
- その後は、年1回の追加接種を行います。
- ワクチン接種は、獣医師と相談の上、適切なスケジュールで行います。
ワクチンは感染を完全に防ぐことはできませんが、感染リスクを大幅に減らすことができます。
感染リスクの管理
感染リスクを下げることは、FeLV感染症予防に重要です。
- 新しい猫を迎える際は、事前にFeLV検査を行います。
- 感染が確認された猫は、他の猫から隔離します。
- 多頭飼育環境では、全ての猫のFeLV検査と隔離飼育を検討します。
- 感染猫と非感染猫の食器やトイレなどは共有させません。
感染リスクの管理は、飼育環境に応じて個別に検討する必要があります。
屋内飼育
屋内飼育は、FeLV感染リスクを大幅に下げることができます。
- 屋内飼育により、感染猫との接触機会を減らすことができます。
- 屋外に出る場合は、ハーネスやリードを使用し、他の猫との接触を避けます。
- 網戸の設置や逃走防止対策も重要です。
屋内飼育は、FeLV感染症以外の様々な危険からも猫を守ることができます。
定期的な健康チェック
定期的な健康チェックは、FeLV感染症の早期発見に役立ちます。
- 年1回以上の定期健康診断を受けます。
- 獣医師による身体検査と血液検査で、感染の有無を確認します。
- 異常が見られた場合は、速やかに獣医師に相談します。
早期発見と適切な管理が、感染猫のQOL向上と生存期間の延長に重要です。
FeLV感染症の予防には、ワクチン接種、感染リスクの管理、屋内飼育、定期的な健康チェックが重要です。飼い主さんが予防の重要性を理解し、愛猫の健康管理に努めることが大切です。獣医師との連携を密にし、適切な予防措置を講じることで、愛猫をFeLV感染症から守りましょう。愛猫との幸せな生活のために、飼い主さんの理解と積極的な取り組みが欠かせません。
まとめ
猫の白血病ウイルス感染症(FeLV)は、免疫力の低下から様々な病気を引き起こす可能性がある重大な感染症です。FeLVの症状は多岐にわたるため、早期発見と適切な治療が重要です。感染予防には、ワクチン接種、感染リスクの管理、屋内飼育、定期的な健康チェックが有効です。飼い主さんがFeLVについて正しく理解し、予防に積極的に取り組むことが、愛猫の健康を守ることにつながります。
獣医師との連携を密にし、愛猫の健康状態に注意を払いながら、幸せな猫との生活を送りましょう。



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