猫の尿路感染症を予防する日常ケア【獣医師が教える方法】

健康・医療

はじめに

猫の尿路感染症は、膀胱や尿道に細菌が感染することで起こる病気です。頻繁な排尿や排尿時の痛み、血尿などの症状が見られます。放置すると重症化し、尿道閉塞や尿毒症など命に関わる危険性もあるため、早期発見と適切な治療が大切です。この記事では、獣医師が教える尿路感染症の予防法と、症状に気づいたときの対処法について解説します。

本動画は https://no-lang.com によりCC-BY-SAライセンスの下で作成されました。

VOICEVOX:四国めたん

Images:
Madrid (RPS 29-11-2012) Calle de la salud, azulejo indicativo by Raimundo Pastor, CC BY-SA 3.0 (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Madrid_(RPS_29-11-2012)_Calle_de_la_salud,_azulejo_indicativo.png)
Free picture: uncapped, amber, medication, bottle, tablets, Public Domain (http://www.pixnio.com/science/medical-science/uncapped-amber-medication-bottle-and-tablets)

猫の尿路感染症の原因と症状

猫の尿路感染症は、細菌やウイルスが尿路に感染することで起こる病気です。適切な治療を行わないと、重症化するリスクがあります。

尿路感染症の原因

尿路感染症の原因は、以下のようなものがあります。

  • 細菌感染: 大腸菌、ブドウ球菌、緑膿菌などの細菌が、尿路に感染します。細菌は、腸管や皮膚、口腔内などから陰部の粘膜を経て上行性に尿路に侵入します。メス猫では、尿道が短いため、細菌が膀胱に到達しやすくなっています。
  • ウイルス感染: 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIP)や猫白血病ウイルス(FeLV)などのウイルスが、尿路に感染することがあります。ウイルス感染は比較的まれですが、重篤な症状を引き起こすことがあります。
  • 真菌感染: カンジダ属などの真菌が、尿路に感染することがあります。真菌感染は、免疫力の低下した猫に見られます。
  • 尿路結石: 尿路結石が尿路を傷つけることで、感染のリスクが高まります。結石による尿路の閉塞は、尿のうっ滞を引き起こし、細菌の増殖を促進します。
    【尿路結石についてはこちら】
  • 尿道カテーテル: 尿道カテーテルの留置は、細菌の侵入経路となることがあります。カテーテルの長期留置は、感染のリスクを高めます。
  • 免疫力の低下: 高齢猫や基礎疾患のある猫は、免疫力が低下しています。免疫力の低下は、感染に対する抵抗力を弱め、尿路感染症のリスクを高めます。

尿路感染症の症状

尿路感染症の症状は、以下のようなものがあります。

  • 頻尿: トイレに行く回数が増える、少量ずつ頻回に排尿する、トイレ以外の場所で排尿するなどの症状が見られます。
  • 血尿: 尿に血が混じり、ピンク色や赤色になります。トイレの猫砂に血の斑点が見られることもあります。
  • 排尿困難: トイレで長時間過ごす、排尿時に鳴き声を上げる、排尿姿勢をとるが尿が出ない、または少量しか出ないなどの症状が見られます。
  • 排尿時の痛み: 排尿時に痛みを感じ、鳴き声を上げたり、逃げ出したりします。
  • 尿のにおいの変化: 尿のにおいが強くなったり、異臭がしたりします。
  • 発熱: 体温が上昇し、39.5℃以上になることがあります。
  • 食欲不振: 食欲が低下し、食べる量が減ります。
  • 活動性の低下: 元気がなくなり、動きが鈍くなったり、隠れがちになったりします。

これらの症状は、他の尿路疾患でも見られることがあります。確定診断には、尿検査や尿培養検査が必要です。尿路感染症は、早期発見と適切な治療が重要です。症状に気づいたら、速やかに獣医師に相談しましょう。重症化すると、腎盂腎炎や敗血症など、重篤な合併症を引き起こすことがあります。

飼い主さんができることは、日頃から猫の排尿状態に注意を払うことです。トイレの回数や尿の色、においの変化など、小さな異変も見逃さないようにしましょう。また、定期的な健康チェックで、尿路の健康状態を確認することも大切です。
【下部尿路疾患についてはこちら】

尿路感染症の予防に役立つ日常ケア

尿路感染症を予防するために、飼い主さんができる日常のケアについて説明します。適切な予防法を実践することで、愛猫の尿路の健康を守ることができます

十分な水分補給

水分補給は、尿路感染症の予防に最も重要な要素の一つです。

  • 新鮮で清潔な水の提供: 常に新鮮で清潔な水を提供し、猫が好む場所に水飲み場を設置します。水飲み場は、食事の場所から離れた静かな場所に置くのが理想的です。
  • 水分摂取量の増加: ウェットフードを積極的に取り入れることで、水分摂取量を増やすことができます。水分量の多いトッピングを活用するのも効果的です。
  • 水飲み場の工夫: 猫の好みに合わせて、水飲み場の種類や位置を変えてみましょう。水の流れる噴水型の水飲み器を使うと、水分摂取量が増えることがあります。

清潔なトイレ環境の維持

清潔なトイレ環境は、尿路感染症の予防に欠かせません。

  • トイレの適切な配置: トイレは、静かで落ち着ける場所に設置します。複数の猫を飼っている場合は、トイレの数を十分に用意します。
  • トイレの清掃: トイレは毎日清掃し、衛生的に保ちます。猫砂は定期的に交換し、尿や便の残りがないようにします。
  • 好みの猫砂の選択: 猫の好みに合った猫砂を選びます。砂の種類や粒の大きさ、香りなどを工夫してみましょう。

ストレス管理

ストレスは、尿路感染症のリスクを高める可能性があります。

  • 環境エンリッチメント: 猫が快適に過ごせる環境を整えます。隠れ家やハイポジション、爪とぎ、おもちゃなどを用意し、猫の自然な行動を促します。
  • 他の猫との関係への配慮: 複数の猫を飼っている場合は、ケンカや競争を避けるための工夫をします。資源(トイレ、食器、寝床など)を十分に用意し、ストレスを軽減します。
  • 飼い主さんとのコミュニケーション: 毎日、猫と遊ぶ時間を設けます。ブラッシングやマッサージで、猫とのスキンシップを図ります。
    【ストレスケア(環境編)】
    【ストレスケア(遊び編)】
    【ストレスケア(多頭飼育編)】

定期的な健康チェック

定期的な健康チェックは、尿路感染症の早期発見と予防に役立ちます。

  • 年に1~2回の健康診断: 年に1~2回、獣医師による健康診断を受けます。尿検査で、尿路感染症の有無をチェックします。
  • 尿のモニタリング: 家庭でも、猫の排尿状態に注意を払います。頻尿、血尿、排尿困難などの症状があれば、速やかに獣医師に相談します。
  • 基礎疾患の管理: 尿路結石や糖尿病など、尿路感染症のリスクを高める基礎疾患がある場合は、適切に管理します。獣医師の指示に従い、食事療法や薬物療法を行います。

適切な抗菌薬の使用

尿路感染症の治療には、抗菌薬が用いられることがあります。

  • 獣医師の指示に従う: 抗菌薬は、獣医師の指示なく使用してはいけません。不適切な抗菌薬の使用は、耐性菌の出現につながります。
  • 投与期間の厳守: 抗菌薬は、指示された期間、きちんと投与します。症状が改善しても、途中で投与を中止してはいけません。
  • 再発の監視: 抗菌薬の投与終了後も、再発の有無を注意深く観察します。再発が疑われる場合は、速やかに獣医師に相談します。

尿路感染症の予防には、飼い主さんの日頃からのケアが欠かせません。適切な水分補給、清潔なトイレ環境、ストレス管理、定期的な健康チェックを心がけましょう。

AIチャットボットにゃん太郎を是非ご利用ください!

尿路感染症が疑われるときの対処法

尿路感染症は、適切な治療を行わないと重症化するリスクがあります。尿路感染症が疑われる場合の対処法について説明します。

獣医師への相談

尿路感染症の症状に気づいたら、まずは獣医師に相談することが大切です。

  • 症状の報告: 頻尿、血尿、排尿困難など、気づいた症状を詳しく伝えます。症状が始まった時期や、症状の程度についても報告します。
  • 尿検査の実施: 獣医師は、尿検査を行って尿路感染症の有無を確認します。尿の色、濁り、pH、潜血、白血球、細菌の有無などを評価します。
  • 尿培養検査の実施: 必要に応じて、尿培養検査を行います。尿中の細菌を同定し、適切な抗菌薬を選択するために重要な検査です。

抗菌薬の投与

尿培養検査の結果に基づいて、適切な抗菌薬が選択されます。

  • 獣医師の指示に従う: 抗菌薬の種類、用量、投与期間は、獣医師の指示に従います。自己判断で抗菌薬を変更したり、中止したりしてはいけません。
  • 規則正しい投与: 抗菌薬は、指示された時間に規則正しく投与します。飲み忘れがないよう、工夫しましょう。
  • 副作用の監視: 抗菌薬の投与中は、副作用の有無を注意深く観察します。食欲不振、嘔吐、下痢などの症状があれば、獣医師に報告します。

補助療法

抗菌薬の投与と並行して、補助療法を行うことで治療効果を高めることができます。

  • 水分補給の促進: 十分な水分補給は、尿路の洗浄効果を高めます。新鮮な水をいつでも飲めるようにし、ウェットフードを取り入れることも効果的です。
  • 尿のPH調整: 尿のPHを調整することで、細菌の増殖を抑制できます。専用のフードやサプリメントを活用することがあります。
  • 鎮痛剤の投与: 尿路の炎症による痛みを和らげるために、鎮痛剤を投与することがあります。獣医師の指示に従い、適切に使用します。

環境の管理

尿路感染症の治療中は、猫の生活環境を整えることも大切です。

  • トイレ環境の整備: トイレを清潔に保ち、猫が快適に排尿できるようにします。トイレの数を増やすことで、ストレスを軽減できます。
  • ストレスの軽減: 静かで落ち着ける空間を用意し、ストレスを最小限に抑えます。他の猫との関係にも配慮し、ケンカや競争を避けるようにします。
  • 安静の確保: 治療中は、過度な運動を控えめにし、安静を保つようにします。隠れ家や高い場所など、猫が安心できる場所を用意しましょう。

再発の予防

尿路感染症は再発しやすい疾患です。再発を防ぐために、以下の点に注意しましょう。

  • 抗菌薬の投与期間の厳守: 指示された期間、抗菌薬を投与し続けることが重要です。症状が改善しても、途中で投与を中止してはいけません。
  • 尿検査によるフォローアップ: 抗菌薬の投与終了後、再度尿検査を行い、感染の有無を確認します。再発の兆候があれば、速やかに獣医師に相談します。
  • 予防法の実践: 十分な水分補給、清潔なトイレ環境、ストレス管理など、予防法を継続して実践します。基礎疾患がある場合は、適切に管理することが重要です。

尿路感染症が疑われる場合は、獣医師との連携が欠かせません。早期の診断と適切な治療で、愛猫の尿路の健康を守ることができます。

尿路感染症の再発を防ぐポイント

尿路感染症は、適切な治療を行っても再発することがあります。再発を防ぐためのポイントについて説明します。

抗菌薬の適切な使用

抗菌薬の適切な使用は、再発予防に不可欠です。

  • 投与期間の厳守: 獣医師に指示された期間、抗菌薬を投与し続けることが重要です。症状が改善しても、途中で投与を中止してはいけません。
  • 再発時の尿培養検査: 再発した場合は、再度尿培養検査を行い、適切な抗菌薬を選択します。前回と同じ抗菌薬が効かないこともあるため、検査結果に基づいた選択が必要です。
  • 予防的な抗菌薬の使用: 頻回に再発する場合は、予防的に抗菌薬を使用することがあります。獣医師と相談し、適切な予防法を検討しましょう。

尿路結石の管理

尿路結石は、尿路感染症の再発リスクを高めます。

  • 結石の除去: 尿路結石がある場合は、外科的に除去することが重要です。結石が残っていると、感染を繰り返す可能性が高くなります。
  • 食事療法: 尿路結石の種類に応じた食事療法を行います。ストルバイト結石の場合は、尿のpHを弱酸性に保つ食事を選びます。シュウ酸カルシウム結石の場合は、尿量を増やすように設計された食事を選びます。
  • 水分補給の促進: 十分な水分補給は、尿路結石の予防に役立ちます。新鮮な水をいつでも飲めるようにし、ウェットフードを取り入れることも効果的です。

基礎疾患の管理

基礎疾患は、尿路感染症の再発リスクを高めます。

  • 糖尿病の管理: 糖尿病は、尿路感染症のリスクを高めます。血糖値を適切にコントロールし、合併症を予防することが重要です。
  • 腎不全の管理: 腎不全は、尿路感染症のリスクを高めます。食事療法や薬物療法で、腎機能の悪化を抑えることが大切です。
    【腎不全についてはこちら】
  • 免疫力の向上: 免疫力の低下は、尿路感染症の再発リスクを高めます。バランスの取れた食事や適度な運動で、免疫力を高めることが重要です。

尿pHのコントロール

尿のpHは、尿路感染症の再発に影響を与えます。

  • 酸性尿の維持: 尿を弱酸性に保つことで、細菌の増殖を抑制できます。獣医師と相談し、適切な食事療法やサプリメントの使用を検討します。
  • アルカリ性尿の予防: アルカリ性の尿は、細菌の増殖を促進します。ストレスの軽減やpH調整食の活用で、アルカリ性尿を予防しましょう。
  • 尿pHのモニタリング: 定期的に尿pHを測定し、適正範囲に保つことが大切です。家庭でも尿試験紙を使って、尿pHをチェックすることができます。

予防法の継続

尿路感染症の再発を防ぐには、予防法の継続が欠かせません。

  • 水分補給の維持: 十分な水分補給を継続し、尿路の洗浄効果を高めます。新鮮な水をいつでも飲めるようにし、ウェットフードを積極的に取り入れます。
  • トイレ環境の清潔維持: トイレを清潔に保ち、細菌の増殖を抑制します。猫砂は定期的に交換し、トイレは毎日掃除しましょう。
  • ストレス管理の継続: ストレスは尿路感染症の再発リスクを高めます。環境エンリッチメントやフェロモン製品の活用で、ストレスを軽減しましょう。

尿路感染症の再発を防ぐには、飼い主さんと獣医師の協力が不可欠です。抗菌薬の適切な使用、基礎疾患の管理、予防法の継続など、総合的なアプローチが必要です。

まとめ

猫の尿路感染症は、適切な日常ケアと早期発見・早期治療で予防することができます。十分な水分補給、ストレス管理、トイレの清潔維持などが重要なポイントです。症状に気づいたら、すぐに獣医師に相談し、的確な診断と治療を受けることが大切です。また、再発防止のために、食事療法や環境改善、定期検診などを継続的に行うことが求められます。飼い主さんと獣医師が連携し、愛猫の尿路の健康を守っていきましょう。

【この記事の監修者】
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長

群馬県出身。ヤマザキ動物専門学校卒業後、麻布大学獣医学部を修了。埼玉県と東京都の動物病院で勤務した経験を持つ。

獣医師・動物看護士・トリミング・ドッグトレーナーの資格を有し、あらゆる面でペットとその飼い主をサポート。生活の悩みから病気やケガに至るまで、幅広い相談に応じる。

過去に飼っていた動物として、ツキノワグマ、リスザル、ニオイカメ、魚、鳥、フクロモモンガ、ハムスター、シマリスなど、多種多様な動物たちと共に過ごしてきました。

院長を務める動物病院「富士見台どうぶつ病院」

住所:東京都中野区上鷺宮4-15-6
電話番号:03-3825-1111
診療時間:午前9:00〜12:00 午後16:00〜19:00
休診日:木曜日
診療対象:犬、猫、うさぎ、ハムスター、フェレット(その他の種類はお問合せください)
※お電話でのご予約は受付けておりません。

窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長をフォローする
健康・医療日常ケア猫の病気予防
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました