ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の違いと対策【獣医師が解説】

健康・医療

はじめに

猫の尿路結石症(尿石症)は、下部尿路疾患(FLUTD)の代表的な病気の一つです。中でも多いのが、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石です。この2種類の結石は、原因や治療法、予防法が異なるため、飼い主さんは違いを理解しておく必要があります。この記事では、獣医師の視点から、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の特徴や対策について解説します。

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ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の特徴

猫のシュウ酸カルシウム結石。溶解しない結石で近年増加傾向。原因や症状、治療方法を解説 | キャットフード勉強会

(↑シュウ酸カルシウム結石の顕微鏡画像はこちらをご覧ください)

ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石は、猫の尿路結石症で最も一般的な2つのタイプです。それぞれの結石は、組成や形成要因が異なるため、予防法や治療法も異なります。ここでは、それぞれの結石の特徴を詳しく説明します。

ストルバイト結石の特徴

ストルバイト結石は、マグネシウム、アンモニア、リン酸塩から構成される尿路結石です。以下のような特徴があります。

  • 尿のpHがアルカリ性(pH 6.5以上)に傾くと形成されやすい: 尿のpHが高くなることで、ストルバイト結晶が析出しやすくなります。尿路感染症や、一部のドライフードの過剰摂取によって、尿がアルカリ性に傾くことがあります。
  • 雌猫に多く見られる: 雌猫は尿道が短く、細菌が膀胱に入りやすいため、尿路感染症のリスクが高くなります。尿路感染症によって尿がアルカリ性に傾くと、ストルバイト結石が形成されやすくなります。
  • 若い猫(1~7歳)に多い: 若い猫は、尿中のミネラル濃度が高く、結石が形成されやすい傾向があります。また、若い猫は活発で、水分摂取量が少ないことがあり、尿が濃縮されやすくなります。
  • X線で確認しやすく、円滑な表面を持つことが多い: ストルバイト結石は、X線で白く映るため、比較的容易に発見できます。表面が滑らかで、楕円形や球形をしていることが多いです。
  • 療法食や薬物療法で溶解させることが可能: ストルバイト結石は、尿のpHを弱酸性から中性に保つ療法食や、尿のpHを下げる薬物療法によって溶解させることができます。結石が小さい場合は、非外科的な治療が選択されることが多いです。

シュウ酸カルシウム結石の特徴

シュウ酸カルシウム結石は、シュウ酸とカルシウムから構成される尿路結石です。以下のような特徴があります。

  • 尿のpHに関係なく形成される: シュウ酸カルシウム結石は、尿のpHが酸性でもアルカリ性でも形成されます。尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度が高くなることが、結石形成の主な要因です。
  • 雄猫に多く見られる: シュウ酸カルシウム結石は、去勢した雄猫に多く見られます。雄猫は尿道が細く長いため、結石が詰まりやすく、完全閉塞のリスクが高くなります。
  • 中高齢の猫(7歳以上)に多い: 加齢に伴う代謝の変化や、腎機能の低下によって、尿中のシュウ酸やカルシウムの濃度が高くなりやすくなります。また、高齢猫は水分摂取量が少なくなる傾向があり、尿が濃縮されやすくなります。
  • X線で確認しにくく、不規則な形状をしていることが多い: シュウ酸カルシウム結石は、X線で映りにくいため、発見が遅れることがあります。結石の表面は凹凸があり、不規則な形状をしていることが多いです。
  • 溶解療法が効かないため、外科的な摘出が必要となることがある: シュウ酸カルシウム結石は、酸性尿でも溶けないため、療法食や薬物療法での溶解が期待できません。結石が大きい場合や、尿路閉塞を起こしている場合は、外科的な摘出が必要となります。

結石の形成要因の違い

ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石では、形成要因に違いがあります。

ストルバイト結石の主な形成要因

  • アルカリ性の尿(pH 6.5以上)
  • 尿路感染症(特に、尿素分解菌の感染)
  • 高マグネシウム食(一部のドライフード)
  • 尿量の減少(水分摂取量の不足)

シュウ酸カルシウム結石の主な形成要因

  • 尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度上昇
  • 遺伝的素因(一部の猫種)
  • 高カルシウム食(一部のドライフード、カルシウムサプリメント)
  • ビタミンCやDの過剰摂取
  • 尿量の減少(水分摂取量の不足)

獣医師は、尿検査や画像診断などを行い、結石のタイプを特定します。結石のタイプに応じた適切な治療と予防を行うことが重要です。飼い主さんは、獣医師の指導のもと、食事管理や水分補給、ストレス軽減、定期的な健康チェックを行い、愛猫の尿路の健康を守りましょう。

ストルバイト結石の原因と対策

ストルバイト結石は、猫の尿路結石症の中で最も一般的なタイプの1つです。ストルバイト結石の形成には、複数の要因が関与しています。ここでは、ストルバイト結石の原因と対策について詳しく説明します。

ストルバイト結石の原因

  • アルカリ性の尿(pH 6.5以上): 尿のpHが高くなることで、ストルバイト結晶が析出しやすくなります。尿路感染症や、一部のドライフードの過剰摂取によって、尿がアルカリ性に傾くことがあります。
  • 尿路感染症(特に、尿素分解菌の感染): 尿素分解菌は、尿素を分解してアンモニアを生成し、尿のpHを上昇させます。尿路感染症によって尿がアルカリ性に傾くと、ストルバイト結石が形成されやすくなります。
  • 高マグネシウム食(一部のドライフード): マグネシウムは、ストルバイト結石の主要な構成成分の1つです。一部のドライフードは、マグネシウム含有量が高く、結石形成のリスクを高めます。
  • 尿量の減少(水分摂取量の不足): 水分摂取量が不足すると、尿が濃縮され、ミネラルの濃度が高くなります。尿中のミネラル濃度が高くなることで、結石が形成されやすくなります。
  • 遺伝的素因: 一部の猫種(ペルシャ、ヒマラヤンなど)は、ストルバイト結石を形成しやすい傾向があります。遺伝的な要因が、結石形成のリスクを高めている可能性があります。

ストルバイト結石の対策

  • 食事療法: ストルバイト結石の溶解と予防に特化した療法食の給与が重要です。療法食は、尿のpHを弱酸性から中性に保ち、マグネシウムやリンの含有量を制限しています。獣医師と相談し、愛猫に適した療法食を選びましょう。
  • 水分補給の促進: 十分な水分補給は、尿を希釈し、結石形成のリスクを減らします。新鮮で清潔な水をいつでも飲めるようにし、複数の水飲み場を用意しましょう。ウェットフードを併用することで、水分摂取量を増やすこともできます。
  • 尿路感染症の予防と治療: 尿路感染症は、ストルバイト結石の形成を促進します。尿路感染症の予防には、トイレの清潔維持と、ストレス軽減が重要です。尿路感染症が疑われる場合は、速やかに獣医師に相談し、適切な治療を受けましょう。
    【尿路感染症を予防する日常ケアについてはこちら】
  • 尿のpHと結晶のモニタリング: 定期的な尿検査で、尿のpHと結晶の有無をチェックすることが重要です。尿のpHが高い場合や、ストルバイト結晶が見られる場合は、食事療法や治療の調整が必要です。家庭でも尿検査紙を使って、尿のpHをモニタリングすることができます。
  • ストレス管理: ストレスは、尿量の減少や尿路感染症のリスクを高めます。適度な運動や遊びの機会を提供し、快適な住環境を整えることが重要です。複数の猫を飼っている場合は、資源(トイレ、食器、寝床など)を十分に用意しましょう。

ストルバイト結石の予防と治療には、飼い主さんと獣医師の協力が欠かせません。食事療法、水分補給、尿路感染症の予防・治療、尿のモニタリング、ストレス管理を継続的に行うことが重要です。定期的な健康チェックで結石の早期発見に努め、異常が見られた場合は速やかに獣医師に相談しましょう。適切な予防と治療で、愛猫の尿路の健康を守ることができます。

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シュウ酸カルシウム結石の原因と対策

シュウ酸カルシウム結石は、猫の尿路結石症の中で、ストルバイト結石に次いで一般的なタイプです。シュウ酸カルシウム結石の形成には、複数の要因が関与しています。ここでは、シュウ酸カルシウム結石の原因と対策について詳しく説明します。

シュウ酸カルシウム結石の原因

  • 尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度上昇: 尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度が高くなることで、結石が形成されやすくなります。シュウ酸は、肝臓でのビタミンCの代謝や、一部の食品(ほうれん草、ナッツ類など)から供給されます。カルシウムは、骨からの溶出や、食事からの過剰摂取によって、尿中濃度が高くなることがあります。
  • 遺伝的素因: 一部の猫種(ヒマラヤン、ペルシャ、スコティッシュフォールド、アメリカンショートヘアなど)は、シュウ酸カルシウム結石を形成しやすい傾向があります。遺伝的な要因が、結石形成のリスクを高めている可能性があります。
  • 高カルシウム食(一部のドライフード、カルシウムサプリメント): カルシウム含有量の高い食事は、尿中カルシウム濃度を上昇させ、結石形成のリスクを高めます。一部のドライフードやカルシウムサプリメントの過剰摂取に注意が必要です。
  • ビタミンCやDの過剰摂取: ビタミンCは体内でシュウ酸に代謝されるため、過剰摂取は尿中シュウ酸濃度を上昇させます。ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進するため、過剰摂取は尿中カルシウム濃度を上昇させます。
  • 尿量の減少(水分摂取量の不足): 水分摂取量が不足すると、尿が濃縮され、シュウ酸やカルシウムの濃度が高くなります。尿中のミネラル濃度が高くなることで、結石が形成されやすくなります。

シュウ酸カルシウム結石の対策

  • 食事療法: シュウ酸カルシウム結石の予防に特化した療法食の給与が重要です。療法食は、シュウ酸とカルシウムの含有量を制限し、尿量を増やすように設計されています。獣医師と相談し、愛猫に適した療法食を選びましょう。
  • 水分補給の促進: 十分な水分補給は、尿を希釈し、結石形成のリスクを減らします。新鮮で清潔な水をいつでも飲めるようにし、複数の水飲み場を用意しましょう。ウェットフードを併用することで、水分摂取量を増やすこともできます。
  • ビタミンCやDの過剰摂取の制限: ビタミンCやDのサプリメントは、獣医師の指示なく与えないようにしましょう。食事からのビタミンCやDの摂取量にも注意が必要です。
  • 尿のモニタリング: 定期的な尿検査で、シュウ酸カルシウム結晶の有無をチェックすることが重要です。結晶が見られる場合は、食事療法や治療の調整が必要です。
  • ストレス管理: ストレスは、尿量の減少や尿路感染症のリスクを高めます。適度な運動や遊びの機会を提供し、快適な住環境を整えることが重要です。複数の猫を飼っている場合は、資源(トイレ、食器、寝床など)を十分に用意しましょう。
  • 外科的治療: 大きな結石や尿路閉塞がある場合は、外科的な結石除去が必要になることがあります。手術後は、再発予防のために、食事療法と水分補給を継続することが重要です。

シュウ酸カルシウム結石の予防と治療には、飼い主さんと獣医師の協力が欠かせません。食事療法、水分補給、ビタミンCやDの制限、尿のモニタリング、ストレス管理を継続的に行うことが重要です。定期的な健康チェックで結石の早期発見に努め、異常が見られた場合は速やかに獣医師に相談しましょう。適切な予防と治療で、愛猫の尿路の健康を守ることができます。

尿路結石症の予防と早期発見のポイント

猫の尿路結石症は、早期発見と適切な予防が大切な病気です。飼い主さんが日頃から愛猫の健康状態に注意を払い、異変に気づいたら速やかに獣医師に相談することが重要です。ここでは、尿路結石症の予防と早期発見のポイントについて詳しく説明します。

予防のポイント

  • 十分な水分補給: 新鮮で清潔な水をいつでも飲めるようにしましょう。複数の水飲み場を用意し、愛猫が好む場所に配置することで、水分摂取量を増やすことができます。ウェットフードを併用することで、水分摂取量を増やすこともできます。
    【水分補給のコツはこちら】
  • 適切な食事管理: 尿路結石症の予防に特化した療法食の給与が重要です。ストルバイト結石用の療法食は、尿のpHを弱酸性から中性に保ち、マグネシウムやリンの含有量を制限しています。シュウ酸カルシウム結石用の療法食は、シュウ酸とカルシウムの含有量を制限し、尿量を増やすように設計されています。獣医師と相談し、愛猫に適した療法食を選びましょう。
  • ストレス管理: ストレスは、尿量の減少や尿路感染症のリスクを高めます。適度な運動や遊びの機会を提供し、快適な住環境を整えることが重要です。複数の猫を飼っている場合は、資源(トイレ、食器、寝床など)を十分に用意し、ストレスを軽減しましょう。
    【ストレスケア(環境編)】
    【ストレスケア(遊び編)】
    【ストレスケア(多頭飼育編)】
  • 肥満の予防: 肥満は、尿路結石症のリスクを高めます。適正体重を維持するために、食事量の管理と適度な運動が重要です。定期的な体重チェックを行い、異常な体重増加に注意しましょう。
    【肥満を予防する食事についてはこちら】

早期発見のポイント

  • 排尿の様子の観察: 頻尿、血尿、排尿困難、排尿時の痛みなどの症状に注意しましょう。トイレ以外の場所で排尿するようになった場合も、尿路結石症の可能性があります。異変に気づいたら、速やかに獣医師に相談することが大切です。
  • 尿の色や量の変化のチェック: 尿の色が濃くなったり、量が減ったりしていないか確認しましょう。尿の色や量の変化は、尿路結石症の早期発見のサインになることがあります。
  • 定期的な尿検査: 年に1~2回の尿検査で、結晶や感染の有無をチェックすることが重要です。自宅でも尿検査紙を使って、尿のpHや結晶の有無を確認することができます。異常が見られた場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。
  • 画像診断: レントゲン検査や超音波検査で、結石の有無や大きさを確認することができます。定期的な健康チェックで画像診断を行うことで、結石の早期発見に役立ちます。

まとめ

猫の尿路結石症は、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石が代表的です。この2種類の結石は、原因や治療法、予防法が異なるため、飼い主さんは違いを理解し、適切な対策を講じる必要があります。ストルバイト結石は、感染症の治療や食事療法で溶解が可能ですが、シュウ酸カルシウム結石は溶けないため、外科的な摘出が必要となることがあります。両者に共通する予防のポイントは、十分な水分補給と適切な食事管理です。また、早期発見のために、飼い主さんは日頃から排尿の様子や尿の色の変化に注意し、定期的な健康診断を受けることが大切です。獣医師と飼い主さんが協力し、愛猫の尿路の健康を守っていきましょう。

【この記事の監修者】
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長

群馬県出身。ヤマザキ動物専門学校卒業後、麻布大学獣医学部を修了。埼玉県と東京都の動物病院で勤務した経験を持つ。

獣医師・動物看護士・トリミング・ドッグトレーナーの資格を有し、あらゆる面でペットとその飼い主をサポート。生活の悩みから病気やケガに至るまで、幅広い相談に応じる。

過去に飼っていた動物として、ツキノワグマ、リスザル、ニオイカメ、魚、鳥、フクロモモンガ、ハムスター、シマリスなど、多種多様な動物たちと共に過ごしてきました。

院長を務める動物病院「富士見台どうぶつ病院」

住所:東京都中野区上鷺宮4-15-6
電話番号:03-3825-1111
診療時間:午前9:00〜12:00 午後16:00〜19:00
休診日:木曜日
診療対象:犬、猫、うさぎ、ハムスター、フェレット(その他の種類はお問合せください)
※お電話でのご予約は受付けておりません。

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