【獣医監修】猫の尿路結石の原因と予防法

健康・医療

はじめに

尿路結石症は、猫の泌尿器系でよく見られる病気の一つです。尿路のどこかに結晶や結石ができることで、膀胱炎や尿道閉塞などの深刻な症状を引き起こします。 猫の尿路結石症について、原因や症状、治療法、予防法を詳しく解説します。

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猫の尿路結石症とは

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(↑腎臓の解剖図はこちらをご覧ください)

尿路結石症は、猫の泌尿器系でよく見られる病気の一つです。腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿路のどこかに結晶や結石ができる病気で、結石の大きさや形状はさまざまです。結石は尿路を傷つけたり、尿の流れを妨げたりすることがあります。

発症リスクと好発年齢

尿路結石症は、猫の年齢、性別、種類によって発症リスクが異なります。 若い猫(1~7歳)や雌猫はストルバイト結石になりやすく、中高齢の猫(7歳以上)や去勢した雄猫はシュウ酸カルシウム結石になりやすい傾向があります。

結石の種類

結石の種類は主に以下の4つに分類されます。

  • ストルバイト結石:マグネシウム、アンモニア、リン酸塩から構成される結石で、猫の尿路結石症の中で最も一般的です。尿のpHがアルカリ性に傾くことや、尿路感染症、高マグネシウム食などが原因となります。
  • シュウ酸カルシウム結石:シュウ酸とカルシウムから構成される結石で、猫の尿路結石症の中で2番目に多く見られます。尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度が高くなることが原因で、遺伝的素因や高カルシウム食なども関連します。
  • 尿酸結石:尿酸から構成される結石ですが、猫ではまれです。プリン代謝障害や高プリン食が原因となります。
  • シスチン結石:シスチンから構成される結石ですが、猫ではまれです。シスチン尿症という遺伝性疾患が原因となります。

尿路結石症の原因

猫のストルバイト結石。発症率は65~75%!原因や症状、療法食はいつまで続ける? | キャットフード勉強会

(↑猫のストルバイト結石の顕微鏡画像はこちらをご覧ください)

尿路結石症の原因は、結石の種類によって異なります。ここでは、猫の尿路結石症で最も一般的なストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石の原因について詳しく説明します。

ストルバイト結石の原因

  • 尿のpHがアルカリ性に傾くこと: 尿素分解菌の感染や、一部のドライフードの過剰摂取によって、尿がアルカリ性に傾くことがあります。アルカリ性の尿は、ストルバイト結晶の形成を促進します。
  • 尿路感染症(特に、尿素分解菌の感染): 尿素分解菌は、尿素を分解してアンモニアを生成し、尿のpHを上昇させます。尿路感染症によって尿がアルカリ性に傾くと、ストルバイト結石が形成されやすくなります。
  • 高マグネシウム食(一部のドライフード): マグネシウムは、ストルバイト結石の主要な構成成分の1つです。一部のドライフードは、マグネシウム含有量が高く、結石形成のリスクを高めます。
  • 尿量の減少(水分摂取量の不足): 水分摂取量が不足すると、尿が濃縮され、ミネラルの濃度が高くなります。尿中のミネラル濃度が高くなることで、結石が形成されやすくなります。

シュウ酸カルシウム結石の原因

  • 尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度上昇: 尿中のシュウ酸とカルシウムの濃度が高くなることで、結石が形成されやすくなります。シュウ酸は、肝臓でのビタミンCの代謝や、一部の食品(ほうれん草、ナッツ類など)から供給されます。カルシウムは、骨からの溶出や、食事からの過剰摂取によって、尿中濃度が高くなることがあります。
  • 遺伝的素因: 一部の猫種(ヒマラヤン、ペルシャ、スコティッシュフォールド、アメリカンショートヘアなど)は、シュウ酸カルシウム結石を形成しやすい傾向があります。遺伝的な要因が、結石形成のリスクを高めている可能性があります。
  • 高カルシウム食(一部のドライフード、カルシウムサプリメント): カルシウム含有量の高い食事は、尿中カルシウム濃度を上昇させ、結石形成のリスクを高めます。一部のドライフードやカルシウムサプリメントの過剰摂取に注意が必要です。
  • ビタミンCやDの過剰摂取: ビタミンCは体内でシュウ酸に代謝されるため、過剰摂取は尿中シュウ酸濃度を上昇させます。ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進するため、過剰摂取は尿中カルシウム濃度を上昇させます。
  • 尿量の減少(水分摂取量の不足): 水分摂取量が不足すると、尿が濃縮され、シュウ酸やカルシウムの濃度が高くなります。尿中のミネラル濃度が高くなることで、結石が形成されやすくなります。
    【ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石についてはこちら】
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尿路結石症の症状

尿路結石症の症状は、結石の種類や大きさ、位置によって異なりますが、一般的な症状は以下の通りです。

  • 頻尿: トイレに行く回数が増える、少量ずつ頻回に排尿する、トイレ以外の場所で排尿する
  • 血尿: 尿に血が混じり、ピンク色や赤色になる、トイレの猫砂に血の斑点がある
  • 排尿困難: トイレで長時間過ごす、排尿時に鳴き声を上げる、排尿姿勢をとるが、尿が出ない、または少量しか出ない
  • 尿の色や量の変化: 尿の色が濃くなる(オレンジ色や茶色)、尿の量が増える(多尿)または減る(乏尿)
  • 行動の変化: いつもより動きが鈍くなる、隠れがちになる、食欲が低下する、グルーミングの回数が増える(特に生殖器周辺)
  • 全身症状: 嘔吐や下痢がみられる、体重が減少する、被毛の艶がなくなる

尿道閉塞を起こすと、尿毒症から命に関わる危険な状態になることもあります。 排尿に関する異常があれば、速やかに獣医師に相談することが大切です。

尿路結石症の治療法

尿路結石症の治療法は、結石の種類や大きさ、部位によって異なります。ここでは、尿路結石症の一般的な治療法について詳しく説明します。

食事療法(溶解療法)

ストルバイト結石の場合、食事療法による溶解が試みられます。

  1. ストルバイト結石用の療法食: 尿のpHを弱酸性から中性に保ち、マグネシウムやリンの含有量を制限した特別療法食を給与します。
  2. 水分補給の促進: 十分な水分補給は、尿を希釈し、結石の溶解を助けます。
  3. 定期的な尿検査: 食事療法中は、定期的な尿検査で尿のpHや結晶の有無をチェックします。

シュウ酸カルシウム結石の場合、食事療法での溶解は期待できません。予防を目的とした食事管理が中心となります。

薬物療法

尿路結石症の治療に、以下のような薬物が使用されることがあります。

  • 尿のpHを調整する薬剤: ストルバイト結石の場合、尿のpHを下げる薬剤(塩化アンモニウムなど)が使用されることがあります。シュウ酸カルシウム結石の場合、尿のpHを上げる薬剤(クエン酸カリウムなど)が使用されることがあります。
  • 鎮痛剤・抗炎症剤: 結石による尿路の炎症や痛みを緩和するために、鎮痛剤や抗炎症剤が処方されることがあります。
  • 抗菌薬: 尿路感染症を合併している場合、抗菌薬が投与されます。尿培養検査で感受性のある抗菌薬を選択し、適切な期間投与します。
  • 尿道弛緩剤: 尿道の痙攣を緩和し、排尿を助けるために、尿道弛緩剤が使用されることがあります。

外科的治療

大きな結石や尿路閉塞がある場合、外科的治療が必要になることがあります。

  • 膀胱切開術(膀胱結石除去術): 全身麻酔下で膀胱を切開し、結石を取り除く手術です。
  • 尿道カテーテル留置: 尿道閉塞がある場合、尿道カテーテルを留置して尿の流れを確保します。カテーテルを通して膀胱を洗浄し、小さな結石や結晶を除去することもあります。
  • 尿道切開術(尿道結石除去術): 尿道に結石が詰まっている場合、尿道を切開して結石を取り除く手術です。尿道の損傷を最小限に抑えるため、熟練した獣医師による実施が求められます。

尿路結石症の予防法

尿路結石症は、適切な予防法を実践することで、発症リスクを減らすことができます。ここでは、尿路結石症の一般的な予防法について詳しく説明します。

十分な水分補給

水分補給は、尿路結石症の予防に最も重要な要素の一つです。

  1. 新鮮で清潔な水の提供: 常に新鮮で清潔な水を提供し、猫が好む場所に水飲み場を設置します。水飲み場は、食事の場所から離れた静かな場所に置くのが理想的です。
  2. 水分摂取量の増加: ウェットフードを積極的に取り入れることで、水分摂取量を増やすことができます。水分量の多いトッピングを活用するのも効果的です。
  3. 水飲み場の工夫: 猫の好みに合わせて、水飲み場の種類や位置を変えてみましょう。水の流れる噴水型の水飲み器を使うと、水分摂取量が増えることがあります。

適切な食事管理

尿路結石症の予防には、結石の種類に応じた食事管理が重要です。

  1. ストルバイト結石の予防食: マグネシウムやリンの含有量を制限し、尿のpHを弱酸性から中性に保つ食事を選びます。獣医師と相談し、猫の状態に合わせた予防食を選ぶことが大切です。
  2. シュウ酸カルシウム結石の予防食: カルシウムとシュウ酸の含有量を制限し、尿量を増やすように設計された食事を選びます。ビタミンCやDの過剰摂取を避け、適切な量の食事を与えることが重要です。
  3. 肥満の予防: 肥満は尿路結石症のリスクを高めるため、適正体重を維持することが大切です。食事量の管理と適度な運動で、肥満を予防しましょう。
    【肥満予防についてはこちら

ストレス管理

ストレスは、尿路結石症の発症リスクを高める可能性があります。

  1. 快適な住環境の提供: 清潔で快適なトイレ環境を整え、猫が安心して排泄できるようにします。隠れ家やハイポジションを用意し、猫がリラックスできる空間を作りましょう。
  2. 適度な運動と遊びの機会: 適度な運動と遊びの機会を与えることで、ストレス発散を促します。猫じゃらしやレーザーポインターなどのおもちゃで、猫の興味を引き出しましょう。
  3. 複数猫家庭での配慮: 複数の猫を飼っている場合は、資源(トイレ、食器、寝床など)を十分に用意し、競争を避けます。猫同士の相性を考慮し、ストレスの少ない環境を整えることが大切です。
    【ストレスケア(環境編)】
    【ストレスケア(遊び編)】
    【ストレスケア(多頭飼育編)】

定期的な健康チェック

定期的な健康チェックは、尿路結石症の早期発見と予防に役立ちます。

  1. 年に1~2回の健康診断: 年に1~2回の定期健診で、尿検査や血液検査を行います。結石の形成や尿路感染症の有無を確認し、早期発見・早期治療に役立てます。
  2. 尿のモニタリング: 家庭でも尿検査紙を使って、尿のpHや結晶の有無をチェックすることができます。異常が見られた場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。
  3. 飼い主さんの観察: 日頃から猫の排尿の様子や行動の変化に注意を払います。頻尿、血尿、排尿困難などの症状があれば、すぐに獣医師に相談することが大切です。

尿路結石症の予防には、飼い主さんと獣医師の協力が欠かせません。 適切な水分補給、食事管理、ストレス管理、定期的な健康チェックを継続することで、尿路結石症の発症リスクを減らすことができます。愛猫の健康を守るために、予防法を実践していきましょう。

まとめ

尿路結石症は、猫の泌尿器系の病気の中でも特に注意が必要な病気の一つです。結石の種類や部位によって症状は異なりますが、重症化すると命に関わることもあります。 予防には、十分な水分摂取と適切な食事管理が欠かせません。また、ストレス軽減やトイレ環境の改善なども大切です。早期発見・早期治療のためにも、普段から猫の排尿の様子に気を配り、異変があれば速やかに獣医師に相談しましょう。

【この記事の監修者】
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長

群馬県出身。ヤマザキ動物専門学校卒業後、麻布大学獣医学部を修了。埼玉県と東京都の動物病院で勤務した経験を持つ。

獣医師・動物看護士・トリミング・ドッグトレーナーの資格を有し、あらゆる面でペットとその飼い主をサポート。生活の悩みから病気やケガに至るまで、幅広い相談に応じる。

過去に飼っていた動物として、ツキノワグマ、リスザル、ニオイカメ、魚、鳥、フクロモモンガ、ハムスター、シマリスなど、多種多様な動物たちと共に過ごしてきました。

院長を務める動物病院「富士見台どうぶつ病院」

住所:東京都中野区上鷺宮4-15-6
電話番号:03-3825-1111
診療時間:午前9:00〜12:00 午後16:00〜19:00
休診日:木曜日
診療対象:犬、猫、うさぎ、ハムスター、フェレット(その他の種類はお問合せください)
※お電話でのご予約は受付けておりません。

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