猫の歯が欠けた・抜けた時の対応と予防法【獣医師が解説】

健康・医療

はじめに

猫の歯が欠けたり抜けたりした時、飼い主さんは驚いてしまうかもしれません。でも、落ち着いて適切な対応をとることが大切です。今回は、獣医師監修のもと、猫の歯が欠けたり抜けたりした時の対応方法と、予防法について詳しく解説します。

動画生成: NoLang (no-lang.com)

VOICEVOX:四国めたん

歯が欠けた・抜けた時の症状

猫の歯に問題が生じた場合、飼い主さんが見逃しやすい症状がいくつかあります。 これらの兆候を見極めることが、愛猫の歯の健康を守る第一歩となります。

食べ方の変化

歯の損傷や欠損は、猫の食べ方に大きな影響を与えます

食べるのを嫌がる

  • 歯の痛みや不快感から、食べることを避ける。
  • 食べ始めても、すぐに食べるのを止めてしまう。
  • 食事に興味を示さなくなる。

片側だけで噛む

  • 痛みのある側の歯を使わないようにする
  • 食べ物を口の片側に寄せて噛む。
  • 歯の損傷や欠損が片側に集中している場合に見られる。

食べこぼしが増える

  • 歯の痛みや欠損により、上手に噛めなくなる。
  • 口からこぼれる食べ物の量が増える。
  • 食べこぼしの周りに、唾液や血液が付着していることがある。

口臭の増加

歯の損傷部分から細菌が繁殖し、口臭が強くなることがあります

損傷部分の感染

  • 歯の欠けた部分や抜けた跡から、細菌が侵入する。
  • 感染が進むと、膿がたまり、強い口臭を発する。
  • 口臭が急に強くなった場合、要注意

プラークの蓄積

  • 歯の表面の凹凸により、プラークが付着しやすくなる。
  • プラークの蓄積は、歯周病を引き起こし、口臭の原因となる。
  • 歯の損傷部分のプラークは、取り除きにくい。

歯茎の腫れや出血

歯の損傷部分の歯茎に炎症が起こると、腫れや出血が見られます

歯茎の発赤と腫れ

  • 損傷部分の歯茎が赤く腫れる。
  • 歯茎の腫れは、歯周病の初期症状の一つ。
  • 歯茎の変化に気づいたら、早めに獣医師に相談する。

歯茎からの出血

  • 歯茎から血が出ることがある。
  • 出血は、歯ブラシやおもちゃをくわえた時に見られることが多い。
  • 慢性的な出血は、歯周病が進行している可能性がある。

顔をしかめる

歯の痛みから、猫が顔をしかめることがあります

口を開けるのを嫌がる

  • 口を開けると痛みを感じるため、開けるのを嫌がる。
  • 獣医師が口の中を診ようとすると、抵抗することがある。

片目を細める

  • 痛みのある側の目を細めることがある。
  • 歯の痛みが顔面神経に影響を及ぼすため。
  • 片目を細めるのが続く場合、歯の問題の可能性を疑う。

これらの症状は、猫の歯の損傷や欠損の早期発見に役立ちます。飼い主さんが日頃から猫の様子をよく観察し、少しでも異変に気づいたら、速やかに獣医師に相談することが大切です。早期発見と適切な処置により、猫の歯の健康を維持することができるでしょう。

歯が欠けた・抜けた時の対応

猫の歯が欠けたり抜けたりした時、飼い主さんが適切な対応をとることが重要です。ここでは、獣医師に相談するタイミングや、家庭でできるケアについて詳しく解説します。

獣医師への連絡

歯の損傷や欠損に気づいたら、できるだけ早く獣医師に連絡しましょう。

連絡のタイミング

  • 歯の欠けや亀裂、抜け落ちに気づいたら、すぐに連絡する。
  • 食べ方の変化や口臭の増加など、症状が見られたら連絡する。
  • 猫が痛がる様子を見せたら、早急に連絡する。

獣医師への伝え方

  • 症状に気づいた時期や状況を詳しく伝える。
  • 食欲や体調の変化についても報告する。
  • 猫の年齢や既往歴、現在の健康状態を伝える。

口の中のチェック

獣医師の指示を仰ぐまでの間、飼い主さんが猫の口の中をチェックします。

歯の残骸の確認

  • 欠けた歯の破片が口の中に残っていないか確認する。
  • 破片が見つかった場合、無理に取り出さず、獣医師に相談する。
  • 破片を飲み込んでいないか、排泄物をチェックする。

傷の有無の確認

  • 歯茎や口内に傷がないか確認する。
  • 出血や腫れ、化膿などの異常がないか確認する。
  • 傷が見つかった場合、清潔なガーゼで軽く押さえる。

食事の工夫

歯の損傷や欠損後は、食事の内容や与え方を工夫します。

柔らかい食事の提供

  • 硬いフードを避け、柔らかいウェットフードを与える。
  • フードを細かく刻んだり、水で戻したりして柔らかくする。
  • 流動食や療法食など、獣医師に適切な食事を相談する。

食事の回数と量の調整

  • 痛みで食べにくい場合、少量ずつ頻回に与える。
  • 食欲が低下している場合、好みのトッピングを加えてみる。
  • 食事量や体重の変化を記録し、獣医師に報告する。

経過観察と再診

獣医師の指示に従って、経過観察と再診を行います。

症状の変化に注意

  • 食欲や元気の有無に注意する。
  • 口臭や歯茎の腫れなど、症状の変化を観察する。
  • 痛みの増減にも注目する。

再診のタイミング

  • 獣医師に指示された日時に再診する。
  • 症状が悪化した場合、早めに再診する。
  • 処方された薬がある場合、服用状況を報告する。

猫の歯が欠けたり抜けたりした時は、飼い主さんが冷静に対応することが大切です。獣医師と連携しながら、適切な処置とケアを行うことで、猫の回復を助けることができるでしょう。日頃から猫の口腔内の健康に注意を払い、異変に気づいたら速やかに行動することが重要です。

AIチャットボットにゃん太郎を是非ご利用ください!

歯が欠ける・抜ける原因

猫の歯が欠けたり抜けたりする原因は様々ですが、主に外傷、歯周病、全身疾患、先天的要因が挙げられます。ここでは、それぞれの原因について詳しく解説し、予防策についても触れます。

外傷

外傷は、猫の歯が欠けたり抜けたりする最も一般的な原因の一つです。

事故による外傷

  • 高所から落下した際の衝撃で歯が損傷することがある。
  • 車との接触事故により、顎や歯に外力が加わることがある。
  • 家具や壁に顔を強くぶつけた場合、歯が欠ける可能性がある。

喧嘩による外傷

  • 他の猫やペットとの喧嘩で、歯を損傷することがある。
  • 喧嘩相手に噛まれたり、強い力で顎を打ったりすることで歯が欠ける
  • 野良猫との縄張り争いは、外傷のリスクを高める。

不適切なおもちゃや食べ物による外傷

  • 硬すぎるおもちゃを噛んだ際に、歯が欠けることがある。
  • 骨やカニの殻など、硬い食べ物を与えると歯が損傷する可能性がある。
  • 適切なサイズと硬さのおもちゃや食べ物を選ぶことが重要。

歯周病

歯周病は、歯や歯周組織に影響を及ぼす進行性の疾患です。
【歯周病の原因と予防についてはこちら】

歯周病の進行

  • 歯垢や歯石の蓄積により、歯肉に炎症が起こる。
  • 炎症が歯を支える組織に広がり、歯周ポケットができる。
  • 歯周ポケットが深くなると、歯を支える骨が溶けていく。

歯周病による歯の欠損や脱落

  • 歯周病が進行すると、歯を支える組織が破壊され、歯が動揺する。
  • 動揺が大きくなると、歯が欠けたり、抜け落ちたりする。
  • 早期発見と治療が、歯の欠損や脱落の予防に重要

歯周病の予防

  • 毎日の歯磨きにより、歯垢や歯石の蓄積を防ぐ。
  • 定期的な歯石除去で、歯周病の進行を抑える。
  • デンタルケア用品の活用も効果的。

全身疾患

一部の全身疾患は、猫の歯の健康に影響を及ぼします

腎臓病

  • 腎臓病では、カルシウムとリンのバランスが崩れる。
  • 血中のカルシウム濃度が低下すると、歯や骨が脆くなる。
  • 歯が欠けたり、抜けたりしやすくなる。
    【腎臓病についてはこちら】

糖尿病

  • 糖尿病では、血糖値が高くなり、細菌感染のリスクが高まる。
  • 歯周病が進行しやすく、歯の欠損や脱落につながる
  • 血流の低下により、歯や歯肉への酸素や栄養の供給が減る。

免疫介在性疾患

  • 自己免疫疾患などでは、免疫システムが歯や歯周組織を攻撃することがある。
  • 歯根の吸収や歯の脱落が起こる可能性がある。
  • 適切な免疫抑制療法が必要となる。

先天的要因

稀に、先天的な歯の異常が、欠損や脱落の原因となります。

エナメル質形成不全

  • エナメル質の形成不全により、歯が脆くなる。
  • 欠けやすく、磨耗しやすい。
  • 遺伝的要因が関与している可能性がある。

歯数の異常

  • 先天的に歯の数が少ない場合がある。
  • 残存する歯に負担がかかり、欠けたり抜けたりしやすくなる。
  • レントゲン検査で、歯の数や位置を確認する。

猫の歯が欠けたり抜けたりする原因を理解することは、予防と早期発見に役立ちます。外傷に注意し、歯周病予防に努め、全身疾患の管理を行うことが重要です。先天的な要因が疑われる場合は、獣医師と相談し、適切な対策を講じましょう。

歯の健康を維持する方法

猫の歯の健康を維持するためには、飼い主さんの日々の努力が欠かせません。ここでは、歯磨き、デンタルケア用品の活用、定期健診、食事管理について、詳しく解説します。

歯磨き

歯磨きは、猫の歯の健康維持に最も効果的な方法です。
【猫が歯磨きを嫌がる時の対処についてはこちら】

歯磨きの習慣化

  • 子猫の頃から歯磨きを始めると、習慣づけやすい。
  • 成猫でも、根気強くトレーニングすることで歯磨きを受け入れるようになる。
  • 無理のない範囲で、徐々に歯磨きの時間を増やしていく。

適切な歯磨き用品の選択

  • 猫用の歯ブラシを選ぶ。指サックタイプもある。
  • 歯磨き粉は、猫用のものを使用する。人用は使わない
  • 歯磨き粉の味や香りを好みのものにすると、猫が受け入れやすい。

正しい歯磨きの方法

  • 歯ブラシを45度の角度で歯と歯茎の境目に当てる。
  • 円を描くようにゆっくりと優しく磨く。
  • 奥歯から前歯へ、上顎と下顎の両方を磨く。

デンタルケア用品の活用

デンタルケア用品は、歯磨きの補助として効果的です。
【口腔の健康を守る日常ケアについてはこちら】

デンタルフードの選択

  • 歯垢や歯石の蓄積を抑制するデンタルフードを選ぶ。
  • 硬さや形状が歯垢除去に適しているものを選ぶ。
  • 猫の年齢や健康状態に合ったフードを選ぶ。

デンタルトリーツの利用

  • 噛むことで歯垢を除去するデンタルトリーツを与える。
  • 1日の給与量を守り、与えすぎないようにする
  • トリーツは主食ではないことを忘れない。

口腔ケア用おもちゃの活用

  • 歯垢除去効果のあるおもちゃを選ぶ。
  • ラバータイプやナイロン製のおもちゃが適している。
  • 定期的に交換し、清潔に保つ。

歯の治療法と予後

猫の歯が欠けたり抜けたりした場合、適切な治療を行うことが重要です。ここでは、治療法の選択肢と、それぞれの予後について詳しく解説します。

抜歯

抜歯は、損傷が大きく、歯の保存が難しい場合に選択される治療法です。

抜歯の適応

  • 歯根が露出している場合
  • 歯が大きく欠けており、歯髄が露出している場合
  • 歯周病が進行し、歯の動揺が大きい場合
  • 歯根嚢胞や歯根尖病巣がある場合

抜歯の方法

  • 全身麻酔下で行われる。
  • 歯肉を切開し、歯を支える骨を削り、歯を取り出す。
  • 複数根の歯は、根ごとに分割して抜歯することもある
  • 抜歯後は、歯肉を縫合する。

抜歯後の管理

  • 抜歯後は、食事を柔らかいものに変更する。
  • 痛みのコントロールのため、鎮痛剤を処方することがある。
  • 抜糸が必要な場合は、1〜2週間後に行う。

抜歯の予後

  • 適切な手術と術後管理により、予後は良好。
  • 高齢猫や全身疾患のある猫では、合併症のリスクが高くなる。
  • 隣接する歯の動揺や傾斜が起こることがある。

歯冠修復

歯冠修復は、歯の欠損部分を人工材料で補填する治療法です。

歯冠修復の適応

  • 歯の欠損が小さく、歯根が健康な場合
  • 歯髄が露出していない場合
  • 咬合に影響がある場合

歯冠修復の方法

  • 全身麻酔下で行われる。
  • 欠損部分を清掃し、削合する。
  • コンポジットレジンなどの人工材料を填入し、硬化させる
  • 咬合を調整し、形態を整える。

歯冠修復の予後

  • 適切な症例選択と手技により、予後は良好。
  • 人工材料の脱離や二次う蝕のリスクがある。
  • 定期的なメンテナンスが必要。

歯内療法

歯内療法は、歯髄が感染した場合に選択される治療法です。

歯内療法の適応

  • 歯髄が感染し、歯根尖病巣がある場合
  • 抜歯を避けたい場合

歯内療法の方法

  • 全身麻酔下で行われる。
  • 歯冠部から歯髄腔に到達し、感染した歯髄を除去する。
  • 根管を拡大・清掃し、根管充填材で封鎖する
  • 歯冠部を修復する。

歯内療法の予後

  • 適切な手技と術後管理により、予後は比較的良好。
  • 複雑な根管形態の歯では、完全な感染除去が難しいことがある。
  • 定期的なレントゲン検査でフォローアップが必要。

歯周療法

歯周療法は、歯周病が原因で歯が動揺している場合に選択される治療法です。

歯周療法の適応

  • 歯周ポケットが深く、歯の動揺がある場合
  • 歯槽骨の吸収が進行している場合

歯周療法の方法

  • 全身麻酔下で行われる。
  • 歯肉を剥離し、歯根面の歯石やプラークを除去する。
  • 歯周ポケットを掻爬し、不良肉芽を除去する
  • 必要に応じて、歯肉剥離掻爬術や歯周組織再生療法を行う。

歯周療法の予後

  • 早期の歯周病では、予後は比較的良好。
  • 進行した歯周病では、完全な組織の再生は難しい。
  • 定期的なメンテナンスと口腔ケアが必要。

猫の歯の治療法は、症状や原因によって選択されます。早期発見と適切な治療が、良好な予後につながります。治療後は、飼い主さんによる適切なホームケアと、定期的な健診が大切です。獣医師と飼い主さんが協力して、猫の歯の健康を守っていきましょう。

まとめ

猫の歯が欠けたり抜けたりした時は、速やかに獣医師に相談し、適切な対応をとることが大切です。また、日頃から歯磨きやデンタルケアに努め、定期健診を受けることで、歯の欠けや脱落を予防しましょう。早期発見と適切な治療により、猫の歯の健康を維持することができます。飼い主さんの細やかな観察と、獣医師との連携が重要です。


【この記事の監修者】
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長

群馬県出身。ヤマザキ動物専門学校卒業後、麻布大学獣医学部を修了。埼玉県と東京都の動物病院で勤務した経験を持つ。

獣医師・動物看護士・トリミング・ドッグトレーナーの資格を有し、あらゆる面でペットとその飼い主をサポート。生活の悩みから病気やケガに至るまで、幅広い相談に応じる。

過去に飼っていた動物として、ツキノワグマ、リスザル、ニオイカメ、魚、鳥、フクロモモンガ、ハムスター、シマリスなど、多種多様な動物たちと共に過ごしてきました。

院長を務める動物病院「富士見台どうぶつ病院」

住所:東京都中野区上鷺宮4-15-6
電話番号:03-3825-1111
診療時間:午前9:00〜12:00 午後16:00〜19:00
休診日:木曜日
診療対象:犬、猫、うさぎ、ハムスター、フェレット(その他の種類はお問合せください)
※お電話でのご予約は受付けておりません。

窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長をフォローする
健康・医療
窪木未津子 獣医師 / 富士見台どうぶつ病院 院長をフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました